ハザードマップの見方|物件探しで確認すべき5つの災害リスク

物件選びで立地の災害リスクを調べる標準ツールが、国土交通省のハザードマップポータルサイトにある「重ねるハザードマップ」です。住所を入力するだけで、洪水・土砂災害・高潮・津波などのリスク情報を1つの地図に重ねて確認でき、誰でも無料で使えます。

2020年8月からは、不動産取引の重要事項説明で水害ハザードマップ上の物件位置の説明が義務化され、災害リスクは「契約直前に知らされる情報」から「探す段階で自分で確認すべき情報」へと位置づけが変わりました。本記事では、重ねるハザードマップの具体的な使い方、物件探しで最低限確認したい5つのリスク、そして「色がついていない=安全」ではない理由を解説します。

重ねるハザードマップの使い方:3ステップで確認できる

重ねるハザードマップ(disaportal.gsi.go.jp)の使い方はシンプルです。(1)物件の住所を検索窓に入力する、(2)画面のアイコンから「洪水」「土砂災害」「高潮」「津波」などの災害種別を選ぶ、(3)地図の色の濃さを凡例と照らし合わせ、想定浸水深や警戒区域の該当有無を読み取る——の3ステップです。

複数の災害情報を同じ地図に重ねて表示できるのが名前の由来で、「洪水は問題ないが土砂災害警戒区域だった」といった見落としを防げます。スマートフォンでも使えるので、内見の際に現在地周辺のリスクをその場で確認するのもおすすめです。

あわせて、市区町村が公表する地域のハザードマップも確認しましょう。避難所の位置や内水氾濫など地域固有の情報は市区町村版のほうが詳しく、ハザードマップポータルサイトの「わがまちハザードマップ」から各自治体のマップへたどれます。

すでに住んでいる人も、台風シーズン(8〜10月)前の年1回、自宅のハザードマップと避難場所・避難経路を見直す習慣をおすすめします。想定浸水深や警戒区域の指定は調査の進展で更新されることがあり、「買ったときは白地だった場所」が指定区域になっている場合もあります。

物件探しで確認すべき5つの災害リスク

住まい選びで最低限確認したいのは、洪水(外水氾濫)・内水氾濫・土砂災害・地震の揺れやすさ・液状化の5つです。それぞれ確認先と見るポイントが異なります。

洪水は河川の堤防決壊などによる浸水で、想定浸水深0.5m超で床上浸水、3m超では2階まで水が達するレベルです。浸水深だけでなく、水が引くまでの「浸水継続時間」も生活再建の難易度に直結します。内水氾濫(雨水出水)は下水道や側溝の処理能力を超えた雨水があふれる災害で、河川から離れた市街地でも起こります。

地震の揺れやすさと液状化は、重ねるハザードマップ本体では扱いが限定的です。防災科学技術研究所の「J-SHIS 地震ハザードステーション」や、都道府県・市区町村が公表する液状化予測図を併用しましょう。埋立地・旧河道・旧水田だった土地は液状化が起こりやすい傾向があります。

5つの災害リスクの確認先と見るポイント
リスク主な確認先見るポイント
洪水(外水氾濫)重ねるハザードマップ「洪水」想定浸水深(0.5m・3mが節目)と浸水継続時間
内水氾濫市区町村の内水ハザードマップ大雨時に水が集まる低地・くぼ地に該当しないか
土砂災害重ねるハザードマップ「土砂災害」土砂災害警戒区域(黄)・特別警戒区域(赤)の該当有無
地震の揺れやすさJ-SHIS・自治体の被害想定地盤の揺れやすさ・想定される震度
液状化都道府県・市区町村の液状化予測図埋立地・旧河道・旧水田など土地の成り立ち

2020年8月から水害リスクの説明が重要事項説明で義務化

2020年8月28日施行の宅地建物取引業法施行規則の改正により、不動産の売買・賃貸の重要事項説明において、水防法に基づく水害ハザードマップ(洪水・雨水出水(内水)・高潮)を提示し、物件のおおよその所在地を示して説明することが義務化されました。2026年7月時点でもこのルールは継続しています。

ただし義務化されたのは「マップ上の位置を示して説明すること」であり、リスクの評価や安全性の保証ではありません。また重要事項説明は契約直前に行われるのが通例のため、そこで初めて浸水想定を知って迷うのでは手遅れに近い状況です。検討段階で自分で確認しておくことが何より重要です。

重要事項説明で「浸水想定区域外」と説明されても、それは安全の保証ではありません。想定を超える降雨や、マップの前提条件の違いにより、区域外でも浸水被害は実際に発生しています。

災害リスクは価格・保険料にも表れる

災害リスクの高い立地は、周辺相場より価格や家賃が割安な場合があります。安さには理由があると考え、「割安だからお得」ではなく「リスクを織り込んだ価格かどうか」を見る視点が必要です。売却時にも買い手から同じ目で見られるため、資産価値にも影響します。

保険料にも差が出ます。火災保険水災補償は、2024年度以降、市区町村ごとの水災リスクに応じて保険料を5段階に細分化する仕組みが導入され、リスクの高い地域ほど保険料が高くなる方向に変わりました。地震保険の保険料も都道府県と建物の構造によって異なります。ハザードマップの色は、毎月の住居費(保険料)にも表れる時代です。

浸水リスクのある立地でも、電気設備が上層階にあるマンションの中高層階を選ぶ、水災補償を厚くする、止水対策を講じるなど、リスクを把握したうえで対策とセットで判断すれば選択肢は広がります。「リスクゼロの立地」を探すより「リスクを管理できる住まい方」を考えるのが現実的です。

「色がついていない=安全」ではない理由

ハザードマップで色がついていないことは、安全の証明ではありません。理由は主に3つあります。第一に、想定条件の限界です。洪水の浸水想定は指定された河川について作成されており、中小河川では浸水想定自体が作られていない場合があります。第二に、内水氾濫のマップは市区町村によって整備状況に差があり、「マップがない=リスクがない」ではありません。第三に、地震はどの場所でも起こりうる災害であり、マップの色だけでは語れません。

色がついていない土地でも、次の点をあわせて確認すると安心度が上がります。

  • 土地の成り立ち:重ねるハザードマップの「地形分類」で旧河道・埋立地・低地などに該当しないか確認する
  • 周辺との高低差:周囲より低い土地・くぼ地は雨水が集まりやすい。雨の日に現地を見るのが理想
  • 過去の浸水履歴:自治体の窓口や公表資料で、過去の水害記録を確認できる場合がある
  • 川・崖・水路との距離:地図と現地の両方で物理的な近さを確認する

よくある質問

ハザードマップはどこで見られますか?
国土交通省のハザードマップポータルサイト(disaportal.gsi.go.jp)で無料で見られます。全国の災害リスクを1つの地図に重ねて表示する「重ねるハザードマップ」と、各市区町村が公表するマップへのリンク集「わがまちハザードマップ」の2本立てで、スマートフォンからも利用できます。
浸水想定区域内の物件は買わないほうがよいですか?
一概には言えません。日本の都市の多くは河川沿いの低地に発達しており、浸水想定区域を完全に避けると選択肢が極端に狭まる地域もあります。重要なのは、想定浸水深と浸水継続時間を把握したうえで、建物側の対策(階数・電気設備の位置・止水対策)と保険(水災補償)を組み合わせてリスクを管理できるかどうかで判断することです。
賃貸でも水害リスクの説明はありますか?
あります。2020年8月施行の宅地建物取引業法施行規則の改正による水害ハザードマップの説明義務は、売買だけでなく賃貸の重要事項説明にも適用されます。ただし説明を受けるのは契約直前のため、部屋探しの段階で重ねるハザードマップを使って自分でも確認しておくことをおすすめします。
地震のリスクもハザードマップで分かりますか?
揺れやすさや液状化の傾向はある程度分かります。防災科学技術研究所の「J-SHIS 地震ハザードステーション」で地盤の揺れやすさや地震動の予測を、都道府県・市区町村の液状化予測図で液状化リスクを確認できます。ただし地震はどこでも起こりうるため、立地の確認とあわせて、建物側の耐震性(新耐震基準かどうか)の確認が欠かせません。

参考情報