地震保険は必要か?火災保険で地震はカバーされない

火災保険に入っているから地震も大丈夫」——これは住まいの保険で最も多い誤解のひとつです。地震・噴火・津波による損害は、たとえ火事という形で現れても火災保険では支払われません。地震による損害に備えるには、火災保険とは別に地震保険を付ける必要があります。

地震保険は民間の保険でありながら、法律に基づいて政府が再保険で支える公共性の高い制度です。そのぶん保険料や補償内容はどの保険会社で入っても同じで、補償額には上限がある——という独特のルールを持っています。

この記事では、地震保険の仕組みと保険料の決まり方、損害認定と実際に受け取れる金額、加入率のデータを踏まえた「入るべき人」の考え方を、2026年7月時点の制度に基づいて解説します。

火災保険では地震の損害は支払われない — 地震による火災も対象外

火災保険は火災・風災・水災など幅広い災害を補償しますが、地震・噴火・これらによる津波を原因とする損害は免責(支払い対象外)です。重要なのは、地震が原因で発生した火災(地震火災)や、地震で延焼・拡大した火災の損害も火災保険では支払われないことです。揺れによる倒壊はもちろん、地震後の火事で全焼しても、火災保険からは保険金が出ません。

多くの火災保険には「地震火災費用保険金」という特約的な補償があり、地震による火災で建物が半焼以上になった場合などに火災保険金額の5%程度が支払われますが、これはあくまで見舞金的なもので、再建費用には遠く及びません。

大地震の後、「火災保険に入っていたのに支払われない」というトラブルが必ず話題になります。地震由来の損害に備える手段は地震保険(または共済の地震補償)だけです。自分の契約に地震保険が付いているか、保険証券の「地震保険」欄をいますぐ確認してください。

地震保険の仕組み — 政府と民間の共同運営、火災保険とセット加入

地震保険は「地震保険に関する法律」(1966年)に基づく制度で、民間保険会社が引き受けた責任を政府が再保険で支えています。巨大地震では民間だけで支払いきれない損害が生じ得るため、1回の地震あたりの総支払限度額を政府と民間で分担する仕組みです。公共性の高い制度のため保険会社の利潤は織り込まれておらず、保険料も補償内容もどの保険会社で契約しても同一です。

契約面の最大の特徴は、単独では加入できず、必ず火災保険とセットで契約することです。火災保険の契約期間の途中からでも付帯できます。

補償額(保険金額)は、火災保険の保険金額の30〜50%の範囲でしか設定できず、さらに建物5,000万円・家財1,000万円が上限です。例えば建物の火災保険金額が3,000万円なら、地震保険は900万〜1,500万円の範囲となります。「同じ家をもう一度建てる」費用を全額カバーする保険ではなく、生活再建の足がかりを確保する保険と位置づけられています。

対象は居住用の建物と家財です。建物と家財は別契約なので、持ち家なら両方、賃貸なら家財のみ付帯するのが基本形です。なお1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・美術品や、自動車は家財の補償対象外です。

保険料は地域と構造で決まる — 割引制度も

地震保険の保険料は、建物の所在地(都道府県)と構造(耐火性の高いイ構造=主に鉄骨・コンクリート造か、ロ構造=主に木造か)の組み合わせで決まります。地震リスクの高い地域(太平洋側の一部の県など)ほど、また木造ほど保険料は高くなります。同じ保険金額でも都道府県によって保険料は数倍の差があります。

建物の耐震性に応じた割引制度もあり、いずれか1つを適用できます。免震建築物割引(50%)、耐震等級割引(等級3で50%・等級2で30%・等級1で10%)、耐震診断割引(10%)、建築年割引(1981年6月以降の新築で10%)です。新耐震基準以降の住宅なら最低でも10%、耐震等級3の新築なら半額になります。

また、支払った地震保険料は地震保険料控除として所得控除の対象になり、所得税・住民税が軽減されます。

地震保険の主な割引(重複適用は不可・2026年7月時点)
割引割引率主な条件
免震建築物割引50%住宅性能表示制度の免震建築物
耐震等級割引10〜50%耐震等級1で10%・2で30%・3で50%
耐震診断割引10%耐震診断等で現行耐震基準への適合を確認
建築年割引10%1981年6月1日以降に新築された建物

全損〜一部損の認定と実際の支払額

地震保険の保険金は、実際の修理費の積み上げではなく、損害の程度を4区分に認定して保険金額に対する割合で支払われます。全損なら地震保険金額の100%、大半損60%、小半損30%、一部損5%です(いずれも時価が限度)。大量の請求に迅速に対応するための割り切った仕組みです。

例えば地震保険金額1,000万円の建物が小半損と認定されれば300万円、一部損なら50万円です。「思ったより少ない」と感じるかもしれませんが、地震保険は住宅再建費の全額補償ではなく、当面の生活再建資金を素早く届けることを目的とした制度です。受け取った保険金の使い道は自由で、修理に限定されません。

損害認定は保険会社の鑑定人が基礎・柱・壁・屋根などの損傷を調査して行います。罹災証明書の判定とは別の制度なので、罹災証明を待たずに保険会社へ連絡して構いません。片付けや応急修理の前に、損害箇所の写真を広めに撮っておくと認定がスムーズです。

加入率のデータ — 付帯率は約7割まで上昇

地震保険の加入は着実に広がっています。損害保険料率算出機構の統計によると、火災保険に地震保険を付帯している割合(付帯率)は全国で約7割(2023年度で69.7%)に達し、東日本大震災(2011年)前の5割弱から大きく上昇しました。世帯数に対する加入率(世帯加入率)でも全国で約35%です。

都道府県差も大きく、大地震を経験した宮城県や、南海トラフ地震が懸念される高知・宮崎などで付帯率が高い傾向があります。裏を返せば、いまだ新規の火災保険契約の約3割は地震保険なしで契約されており、大地震の際に「地震では火災保険が出ない」ことに直面する世帯が相当数残っているということです。

入るべき人の条件 — 判断の目安

地震保険は保険料が安くない一方、補償は最大でも火災保険の半分です。それでも次のような条件に当てはまる人ほど、加入の優先度は高くなります。

  • 住宅ローンの残債が多い人: 地震で家を失ってもローンは残ります。二重ローンを緩和する最有力の備えが地震保険です
  • 貯蓄が薄く、被災後の生活再建資金に不安がある人: 公的支援(被災者生活再建支援金)は最大300万円で、再建には足りません
  • 地震リスク・液状化リスクの高い地域や旧耐震・木造密集地域に住む人: ハザードマップと建物の耐震性で自宅のリスクを確認しましょう
  • 賃貸住まいの人: 建物は大家の責任ですが、家財の損害は自分持ちです。家財のみの地震保険付帯を検討する価値があります
  • 逆に優先度が下がるのは、貯蓄が十分にあり自力再建できる人や、耐震性の極めて高い建物で建物損害リスクを低く見積もれる人です

よくある質問

地震保険だけ単独で入ることはできますか?
できません。地震保険は火災保険とセットでのみ契約できる制度です。ただし、現在契約している火災保険の期間の途中からでも地震保険を追加で付帯することは可能なので、火災保険を掛け替える必要はありません。契約中の保険会社や代理店に連絡すれば手続きできます。
地震保険はどの保険会社で入るのが得ですか?
どの保険会社でも同じです。地震保険は政府と民間が共同運営する公共性の高い制度のため、保険料も補償内容も法令に基づき全社共通で、会社による差はありません。比較すべきはセットで入る火災保険のほうの補償内容と保険料です。なお共済(全労済・県民共済など)の地震補償は地震保険とは別制度で、仕組みや支払い基準が異なります。
地震保険で家は建て直せますか?
地震保険だけで建て直すのは難しい設計です。保険金額は火災保険の30〜50%(建物5,000万円上限)までしか設定できず、全損認定でもその範囲の支払いにとどまります。地震保険は住宅の完全な再建費用ではなく、当面の住まい確保や生活再建の資金を素早く届けることを目的とした制度です。不足分は貯蓄・公的支援(最大300万円)と合わせて備える必要があります。
マンションでも地震保険は必要ですか?
検討する価値はあります。マンションの専有部分と家財は各区分所有者が自分で地震保険を掛けます(共用部分は管理組合の保険)。耐火構造のマンションは保険料が木造より安く、揺れによる全壊リスクは低い一方、家財の損害や、大規模半壊時の修繕一時金・生活再建費用への備えとしての意味があります。共用部分に管理組合として地震保険を付けているかも確認しておきましょう。
南海トラフのような巨大地震が起きたら、保険金は本当に支払われますか?
制度としてその事態を想定して設計されています。地震保険は1回の地震あたりの総支払限度額(2026年7月時点で12兆円)を政府と民間で分担する再保険の仕組みを持ち、限度額は関東大震災級でも対応できる水準に設定されています。仮に支払総額が限度額を超える場合は保険金が削減される規定がありますが、過去の大震災(東日本大震災・熊本地震など)では削減なく支払われています。

参考情報