ペアローンの繰り上げ返済はどっちから?金利・控除・団信・贈与で決める優先順位

この記事の要点

  • 利息削減の基本は金利が高い方のローンから。同条件の試算では金利0.5%で約15.7万円1.5%で約54.4万円と、100万円の繰り上げ効果に3倍以上の差が出ます
  • 住宅ローン控除の期間中は、控除の枠を使い切れている方のローンを残す視点も必要。繰り上げた方の控除は年末残高の減少分だけ目減りします
  • 繰上げ資金は自分のローンに充てるのが原則。相手名義のローンをまとまった資金で返すと贈与税の問題が生じ得ます

ペアローンは夫婦それぞれが1本ずつローンを組む方式なので、繰り上げ返済のときに「どちらのローンから返すか」という、単独ローンにはない問題が生まれます。

答えの軸は4つです。①金利(高い方から返すのが利息面の基本)、②住宅ローン控除(繰り上げた方の控除が減る)、③団信(繰り上げた方の保障が減る)、④資金の出所(相手のローンを返すと贈与になり得る)。この4つを順に確認すれば、自分たちの正解が見えてきます。

この記事では試算例つきで4つの軸を整理し、最後に判断チェックリストをまとめます。それぞれのローンでの繰り上げ効果は繰り上げ返済シミュレーターで、条件を変えて確認できます。

軸①金利: 高い方から返すのが利息削減の基本

繰り上げ返済は「その元本に将来かかるはずだった金利」を消す行為なので、効果はローン金利に比例します。夫婦で金利が違う(変動と固定を分けた、借入時期が違う等)なら、金利が高い方のローンから繰り上げるのが基本です。

たとえば残高がほぼ同じでも、金利0.5%のローンに100万円を繰り上げた場合の利息軽減は約15.7万円1.5%のローンなら約54.4万円。同じ100万円の使い道として3倍以上の差になります。

夫婦とも変動金利で同金利なら、金利面ではどちらでも大差ありません。その場合は次の②〜④で決めます。なお、変動金利の今後の上昇を織り込んで比較したい場合は、繰り上げ返済シミュレーターの金利変動シナリオが使えます。

100万円を繰り上げた場合の利息軽減(借入2,000万円・35年・5年経過・期間短縮型)
ローン金利利息軽減完済の短縮
年0.5%約**15.7万円**1年10ヶ月
年1.5%約**54.4万円**2年1ヶ月

軸②住宅ローン控除: 枠を活かせている方のローンは残す

ペアローンでは夫婦それぞれが住宅ローン控除(年末残高×0.7%)を受けられます。繰り上げ返済をすると、繰り上げた方の年末残高が減り、その人の控除も減ります100万円の繰り上げなら、控除が残り8年ある場合で合計約5.6万円の目減りです(単純概算)。

ここで効いてくるのが納税額の上限です。控除は本人が納めた税金の範囲でしか戻らないため、収入が低い方は残高×0.7%の枠を使い切れていないことがあります。その場合、枠を使い切れていない方のローンを繰り上げる方が、世帯全体で失う控除が小さくなります。

控除期間が終わったローンがあるなら話は簡単で、控除が終わった方から繰り上げるのが定石です。低金利×控除期間中なら、そもそも控除終了まで繰り上げを待つ選択も含めて、繰り上げ返済はしない方がいい?の判断基準を参照してください。

軸③団信: 繰り上げはその人の保障を減らす

ペアローンでは夫婦それぞれが自分の借入分の団信に入ります。どちらかに万一のことがあればその人のローンだけが保険で完済され、相手のローンはそのまま残ります。

つまり繰り上げ返済は「その人の生命保険を減らす」行為でもあります。世帯の家計を支える度合いが大きい人のローンを繰り上げると、万一のときに残される保障がその分小さくなります。生命保険を別途十分に掛けていないなら、家計の柱になっている人のローンは残高(=保障)を厚く残す発想も合理的です。

また、育休・時短などで一方の収入が下がる時期が見えているなら、その人のローンを返済額軽減型で繰り上げて毎月の負担を下げる、という使い方もあります。期間短縮型と軽減型の違いはシミュレーターで比較できます。

軸④資金の出所: 相手のローンを返すと贈与になり得る

見落としやすいのが税金です。繰上げ資金を出す人とローンの名義人がズレると——たとえば夫の貯蓄で妻名義のローンを100万円超返すと——贈与税の対象になり得ます(基礎控除は年110万円)。

「金利が高いのは妻のローンだが、貯蓄があるのは夫」というケースでは、利息面の最適(妻のローンを繰り上げ)と税務面の安全(自分の資金は自分のローンへ)が衝突します。まとまった額なら、各自の資金で各自のローンを返すのが原則です。詳しくは繰り上げ返済と贈与税の記事で、110万円以内に分ける方法や貸付として整理する方法を解説しています。

  • !!warn 夫婦共通口座から返済している家庭は、拠出割合と返済の対応関係を説明できるようにしておきましょう。持分割合・ローン負担と実際のお金の流れのズレは、繰り上げに限らず贈与認定のもとになります

判断チェックリスト: この順番で決める

4つの軸を、実際に迷ったときの確認順に並べます。なお連帯債務型(フラット35など1本のローンを2人で返す形)には「どちらのローンか」の問題自体がありません。この記事はペアローン(2契約)前提です。

  • ① 生活防衛資金は残るか — 生活費6ヶ月〜1年分を確保してから。繰り上げたお金は戻せません
  • ② 資金は誰のものか — 自分の資金は自分のローンへが原則。相手のローンに充てるなら年110万円と贈与の整理を先に
  • ③ 控除が終わったローンはあるか — あるならそちらから。両方控除中なら枠を使い切れていない方を優先
  • ④ 金利差はあるか — 高い方から。変動×固定の組み合わせなら将来の金利上昇も織り込んで比較
  • ⑤ 団信の保障バランス — 家計の柱の人の残高(=保障)を削りすぎない。収入減の時期が近いなら軽減型も検討
  • ⑥ 手数料 — 2契約なので手続きも手数料も2回分。少額を両方に分けるより、優先順位の高い方へまとめる方が効率的な場合があります
  • !!good 迷ったら、それぞれのローンの条件でシミュレーターを2回実行して「利息軽減−控除の目減り−手数料」の正味を比べるのが確実です

よくある質問

ペアローンの繰り上げ返済はどちらのローンからすべきですか?
利息削減の面では金利が高い方のローンからが基本です。ただし、住宅ローン控除の期間中は控除の枠を使い切れていない方を優先する、家計の柱になっている人の団信(残高=保障)は厚く残す、繰上げ資金は自分名義のローンに充てる(贈与税の回避)といった観点で順番が変わることがあります。生活防衛資金の確保が最優先である点は単独ローンと同じです。
住宅ローン控除の期間中はどちらを繰り上げるべきですか?
世帯で失う控除が小さくなる方です。控除は納めた税金の範囲でしか戻らないため、収入が低く残高×0.7%の枠を使い切れていない方のローンを繰り上げる方が、控除の目減りの実害が小さくなります。控除が終わったローンがあるならそちらが最優先です。低金利のローンでは控除終了まで繰り上げ自体を待つ選択肢もあわせて検討してください。
夫の貯蓄で妻のローンを繰り上げ返済しても大丈夫ですか?
110万円(基礎控除)を超えるまとまった額だと、夫から妻への贈与として贈与税の対象になり得ます。婚姻20年以上で使える配偶者控除(おしどり贈与)も、対象は居住用不動産とその取得資金のみでローン返済資金は対象外です。自分の資金は自分のローンに充てるのが原則で、どうしても相手のローンに充てたい場合は110万円以内に分ける・貸付として契約書を作るなどの整理が必要です。
連帯債務(収入合算)の場合も繰り上げの順番を考える必要がありますか?
いいえ。連帯債務型(フラット35の収入合算など)はローンが1本なので「どちらのローンから」という問題はありません。ただし繰上げ資金を誰が出すかと持分・負担割合の関係は残るため、負担割合と大きくズレた資金の出し方をすると贈与の問題が生じ得る点はペアローンと同じです。

理解度チェック

Q. ペアローンで繰り上げ返済をするなら、利息削減の面では金利が高い方のローンから返すのが基本である。

答え: ⭕ — 繰り上げ返済の効果は「その元本にかかるはずだった金利」の分だけ利息が減ることなので、金利が高いローンほど効果が大きくなります。ただし住宅ローン控除の残り枠・団信の保障・繰上げ資金をどちらが出すか(贈与税)によって、最適な順番が変わる場合があります。

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