中古マンションのリノベーション費用相場|㎡単価と予算の立て方

中古マンションを買ってリノベーション」は、新築より立地や広さの選択肢を広げやすい住まいの選び方として定着しました。一方で、リノベーション費用は仕様と工事範囲によって数百万円単位で変わるため、相場観がないまま物件探しを始めると、物件は買えたのに工事予算が足りない、という事態になりがちです。

費用を見積もる出発点になるのが「㎡単価」です。どこまで解体してやり直すかで単価のレンジが変わり、さらに水回りの移動や造作の多さで上下します。加えてマンションには「そもそも工事できない部分」があり、これを知らずに物件を選ぶと希望の間取りが実現できません。

本記事では、2026年7月時点の相場観として、リノベーション費用の目安と費用が膨らむポイント、マンション特有の制約、資金計画とローンの組み方までを解説します。

部分リフォームとフルリノベーションの違い——「どこまで解体するか」で費用が決まる

ひとくちにリノベーションといっても、キッチンや浴室など設備単位で交換する部分リフォームと、内装・設備をすべて解体して作り直すフルリノベーションでは、費用の桁が違います。フルリノベーションの中でも、躯体(コンクリートの構造体)だけを残して配管・配線まで全部やり直す工事は「スケルトンリフォーム」と呼ばれます。

30年を超えるマンションでは、見えない給排水管や電気配線の劣化が進んでいることが多く、表面だけきれいにしても数年後に配管工事でやり直しになるリスクがあります。古い物件ほど、スケルトンにして配管まで更新する価値が高くなる——つまり㎡単価は高くなる、という関係です。

予算を立てるときは、「内装の好みを実現する費用」と「配管・断熱など性能を更新する費用」を分けて考えると判断しやすくなります。後者は削ると後で高くつく費用です。

㎡単価の目安と広さ別の概算

2026年7月時点の目安として、フルリノベーションの工事費は㎡あたり10〜20万円程度が中心帯です。表面的な内装替え中心なら10万円/㎡前後から、配管更新を含むスケルトン+造作や高グレードの設備を選ぶと20万円/㎡を超えることも珍しくありません。近年は資材費・人件費の上昇が続いており、数年前の事例より高めに見ておくのが安全です。

広さ別のイメージは次の表のとおりです。あくまで概算であり、同じ広さでも仕様・工事範囲で1.5〜2倍の差が出ます。

表の金額は工事費のみの目安です。実際には設計料(工事費の10%前後を別建てにする会社もあります)、仮住まい・引越し費用、家具・カーテン・照明、消費税を加えた総額で資金計画を立ててください。

フルリノベーション費用の広さ別概算(㎡単価10〜20万円で計算、2026年7月時点の目安)
専有面積概算費用想定される住まい方の例
40㎡400万〜800万円程度単身・二人暮らしのコンパクトリノベ
55㎡550万〜1,100万円程度二人暮らし〜子ども1人の家族
70㎡700万〜1,400万円程度ファミリー向けの標準的な広さ
85㎡850万〜1,700万円程度ゆとりのあるファミリー・二世帯予備

水回りの移動で費用が跳ねる理由

間取り変更の中でも、キッチン・浴室・トイレなど水回りの移動は費用を大きく押し上げます。理由は排水です。排水管には水を流すための勾配が必要で、共用の排水管(パイプスペース)から遠い位置に水回りを動かすほど、勾配を確保するために床を上げる工事が必要になります。

床を上げれば天井までの高さが下がり、居住性に影響します。もともと天井高に余裕のない物件や、直床(二重床でない)物件では、希望の位置に水回りを動かせないこともあります。また、給水・給湯・排気(換気ダクト)の経路も移動距離に応じて工事が増えます。

同じ「キッチン移動」でも、パイプスペースの近くへ数十cm動かすのと、部屋の反対側へ動かすのでは費用がまったく違います。水回りの大幅な移動を前提にするなら、物件の内見段階でリノベーション会社に同行してもらい、配管経路と床の構造を確認してから購入を決めるのが失敗しない手順です。

マンションでできない工事——共用部・構造・管理規約の3つの壁

マンションのリノベーションで手を入れられるのは専有部分だけです。次のような部分・内容は、どれだけ予算があっても原則として変更できません。物件選びの段階で「変えられない部分が許容できるか」を確認することが、リノベ前提の中古選びの核心です。

  • 窓・サッシ、玄関ドアの外側——共用部分のため交換不可(内窓の設置は可能なことが多い)
  • バルコニー——専用使用権があるだけの共用部分。物置設置や床の固定造作は不可
  • 構造壁(耐力壁)——壁式構造のマンションに多い。撤去できず間取り変更が制限される
  • パイプスペース・共用配管——位置は動かせず、水回り計画の制約になる
  • 床材の変更制限——管理規約で遮音等級(L-45など)が指定され、無垢フローリング等が制限される場合がある
  • 電気・ガス容量の増強——建物全体の容量による制限で希望どおりにできないことがある
  • 工事時間・工期の制限——管理規約で工事可能な曜日・時間帯、届出・承認手続きが定められている

資金計画——物件+リノベ費用の一体型ローンを軸に

中古購入+リノベーションの資金調達は、物件価格とリノベーション費用をまとめて借りる「一体型住宅ローン」が主流になっています。リフォーム単独のローン(無担保型)は金利が高め・期間が短めになりがちなのに対し、一体型なら住宅ローンの低金利・長期間で全体を組めるためです。

ただし一体型には段取り上のハードルがあります。ローン審査までに工事見積もりが必要になるため、物件探しとリノベーション会社選びを並行して進めなければなりません。物件の購入申込みから契約までの短い期間に概算見積もりを用意できるよう、物件が決まる前にリノベ会社を決めておく(あるいはワンストップ型の会社を使う)のが実務的な進め方です。

予算配分は「物件+工事費」の総額だけでなく、購入後の毎月の負担で確認するのが確実です。当サイトのシミュレーターでは、諸費用・管理費・修繕積立金固定資産税まで含めた毎月の実質負担を試算できます。リノベ費用を上乗せした借入額で無理がないか、契約前に確認しておきましょう。

工事期間・仮住まい・相見積もりの注意点

フルリノベーションの工事期間は、着工から2〜4ヶ月程度が目安です。その前に設計・打ち合わせ・管理組合への工事申請で1〜3ヶ月程度かかるため、物件引き渡しから入居までは合計3〜6ヶ月を見ておきます。この間、現在の住まいの家賃(または仮住まい費用)と新居のローン返済が二重にかかる期間が生じ得るため、資金計画に組み込んでおく必要があります。

相見積もりを取るときの最大の注意点は、工事範囲と仕様を揃えることです。A社は配管更新込み・B社は既存流用、A社は設計料込み・B社は別建て——という状態で総額だけ比べると、必ず安く見える見積もりを選んでしまいます。「一式」表記が多い見積もりは内訳の確認を求め、含まれていない工事(共用部側の申請費用、廃材処分、養生など)がないかを確認してください。

また、解体してみて初めて分かる劣化(下地の腐食、想定外の配管状態)による追加工事は一定の確率で発生します。見積もり総額の5〜10%程度を予備費として確保しておくと、途中での仕様ダウンを避けられます。

よくある質問

70㎡のマンションをフルリノベーションするといくらかかりますか?
2026年7月時点の目安で、工事費700万〜1,400万円程度です。㎡単価10〜20万円が中心帯で、配管更新を含むスケルトン工事か、設備のグレード、造作家具の量で大きく変わります。これに設計料・仮住まい費用・家具などを加えた総額で予算を組んでください。
築何年までの物件ならリノベーションできますか?
築年数そのものに上限はなく、旧耐震か新耐震か、管理状態(修繕積立金・長期修繕計画・大規模修繕の履歴)、構造(間取り変更しやすいラーメン構造か、制約の多い壁式か)で判断します。築古でも管理が良好な物件はリノベ向きですし、逆に築浅でも管理規約の制限で希望が実現できないことがあります。購入前にリノベ会社に物件を見てもらうのが確実です。
リノベーション費用を安く抑えるコツはありますか?
効果が大きいのは、水回りの位置を大きく動かさない、既存で使える部分(建具・床の一部など)を活かす、造作家具を減らして既製品を使う、優先順位を決めて「今やる工事」と「後からできる工事」を分けることです。一方、配管更新や断熱など解体しないとできない工事を削るのは、後で高くつくためおすすめしません。
住みながらリノベーションはできますか?
設備交換や部屋単位の部分リフォームなら住みながら可能な場合もありますが、フルリノベーションは全面解体を伴うため原則として仮住まいが必要です。仮住まいの家賃・引越し2回分の費用(数十万円規模)も予算に含めておきましょう。
物件のローンとリノベーション費用のローンは一本にまとめられますか?
多くの金融機関で、物件価格とリノベーション費用をまとめて借りる一体型の住宅ローンを利用できます。リフォーム単独の無担保ローンより低金利・長期で組めるのが利点ですが、審査時に工事見積もりが必要なため、物件探しと並行してリノベーション会社を決めておく段取りが重要です。取り扱い条件は金融機関によって異なるため、事前審査の段階で確認してください。

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