2025年9月東京豪雨の記録|世田谷・目黒・品川で起きた内水氾濫と浸水被害
この記事の要点
- 2025年9月11日午後、東京都心と神奈川県で1時間100mmを超える猛烈な雨が相次ぎ、記録的短時間大雨情報が複数回発表された
- 品川区の戸越銀座商店街や自由が丘周辺が冠水し、世田谷区の谷沢川・品川区の立会川があふれ、都内の浸水は約1,200棟(うち床上浸水約900棟)にのぼった
- 河川から離れた"山の手"の市街地でも、下水道の排水能力(1時間50mm前後)を超える雨は内水氾濫を引き起こす——それを都心で実証した事例
2025年9月11日の午後、東京都心を発達した積乱雲が相次いで通過し、1時間に100mmを超える猛烈な雨が観測されました。気象庁は記録的短時間大雨情報を複数回発表。目黒川・妙正寺川・石神井川には氾濫危険情報が出され、世田谷区・目黒区・品川区・大田区を中心に、道路や商店街の冠水、住宅への浸水が相次ぎました。
この豪雨が住まい選びの観点で重要なのは、被害が「川沿いの低地」だけでなく、"山の手"と呼ばれる内陸の市街地でも発生したことです。本記事では、どこで何が起きたのかを記録し、東京で家を探す人・住んでいる人が持ち帰るべき教訓を整理します。
何が起きたか:戸越銀座・自由が丘の冠水、谷沢川・立会川の溢水
被害が集中したのは東京23区の南西部です。品川区では戸越銀座商店街の一帯が冠水し、店舗への浸水被害が発生。目黒区・世田谷区の境に近い自由が丘周辺でも道路冠水が起きました。世田谷区では谷沢川が、品川区では立会川があふれ、周辺の道路が水に浸かりました。
都内の浸水被害は、集計が進んだ1週間後の時点で約1,200棟(うち床上浸水約900棟)にのぼりました。夕方の帰宅時間帯と重なったこともあり、鉄道の運転見合わせや道路の通行止めなど、生活への影響も広範囲に及びました。
| 地域 | 主な被害 |
|---|---|
| 品川区 | 戸越銀座商店街一帯が冠水。立会川があふれ周辺道路が浸水 |
| 世田谷区 | 谷沢川が溢水。周辺の住宅・道路に浸水被害 |
| 目黒区 | 自由が丘周辺などで道路冠水。目黒川に氾濫危険情報 |
| 大田区ほか | 1時間100mm級の雨により各所で道路冠水・住宅浸水 |
| 都内全域 | 浸水 約1,200棟(うち床上浸水 約900棟)※1週間後時点の集計 |
なぜ"山の手"で浸水したのか:内水氾濫の構造
世田谷・目黒・品川の被害地域の多くは、大河川の浸水想定区域ではありません。それでも浸水したのは、市街地に降った雨そのものが排水しきれずにあふれる内水氾濫が起きたからです。多くの都市の下水道は1時間50mm前後の雨を想定して整備されており、1時間100mm級の雨はその2倍——処理能力を超えた分は低い場所へ流れ、坂の下・くぼ地・暗渠(かつての川を埋めた水路)沿いに集まります。
実際、被害が出た戸越銀座や自由が丘は、周囲より低い谷地形に発達した街です。東京の地形は台地と谷が入り組んでおり、「駅前の便利な商店街=かつて水が集まる谷だった場所」というケースが少なくありません。地名や街の雰囲気ではなく、土地の高低と下水道の能力がリスクを決めます。
内水氾濫と外水氾濫(洪水)の違い、全国の近年事例は内水氾濫の解説記事でまとめています。2026年の令和8年8月千葉豪雨でも、浸水報告の55.7%が浸水想定区域の外でした。
東京で住まいを探す人への教訓
第一に、東京では内水の想定情報が整備されていることを活用しましょう。東京都は下水道の処理能力を超える雨を想定した「浸水予想区域図」を流域ごとに公表しており、各区のハザードマップにも反映されています。洪水(外水)のマップだけでなく、浸水予想区域図・内水ハザードマップを必ず確認してください。
第二に、建物の形に注意すること。内水氾濫の浸水深は床下〜床上程度が中心のため、被害は半地下・地下室・掘り込み車庫・1階に集中します。都心で多い半地下住戸は、賃料・価格が割安な分、この豪雨のような雨では最も弱い構造です。
第三に、過去の浸水記録と保険をセットで考えること。各区は過去の浸水実績を公表している場合があり、浸水履歴の調べ方は別記事で手順化しています。水災補償の要否も、マップと履歴を見てから判断してください。
東京の水害対策は進化もしています。環七地下の調節池のような大規模施設が整備され、対策後に被害が減った流域もあります。「昔浸かった場所」が今も同じリスクとは限らないため、自治体の治水事業の進捗もあわせて確認すると、より正確に判断できます。
よくある質問
- 世田谷区や目黒区は水害リスクが高いのですか?
- 区全体で高い・低いと言える話ではありません。世田谷区・目黒区・品川区は台地と谷が入り組んだ地形で、同じ区内でも台地の上と谷底ではリスクが大きく異なります。2025年9月11日の豪雨で浸水したのは主に谷地形・川沿いの低い場所です。各区のハザードマップ(洪水・内水)と東京都の浸水予想区域図で、検討している場所単位で確認してください。
- 近くに川がないのに、なぜ浸水するのですか?
- 内水氾濫だからです。下水道や側溝の排水能力(多くの地域で1時間50mm前後)を超える雨が降ると、行き場を失った雨水が低い場所に集まってあふれます。また東京には暗渠(かつての川を埋めてふたをした水路)が多く、豪雨時には暗渠沿い・坂の下に水が集中しやすい構造があります。川が見えないことはリスクがないことを意味しません。
- 東京の内水ハザードマップはどこで見られますか?
- 東京都建設局・下水道局が流域ごとに公表する「浸水予想区域図」と、各区が発行するハザードマップで確認できます。国土交通省ハザードマップポータルサイトの「わがまちハザードマップ」から各区のページへたどるのが確実です。洪水ハザードマップ(河川の氾濫想定)とは別の地図なので、両方を確認してください。
- 半地下の物件は避けるべきですか?
- 内水リスクのある場所では慎重になるべきです。半地下・地下は内水氾濫時に最初に水が流れ込む場所で、浸水深が浅くても被害が大きくなります。どうしても選ぶ場合は、浸水予想区域図・過去の浸水実績を確認したうえで、止水板の有無や排水ポンプの整備状況、火災保険の水災補償を必ずセットで検討してください。