住宅ローンの金利の仕組み入門|優遇金利・5年ルール・金利の決まり方

住宅ローンの広告で見かける「変動金利0.3%」といった数字は、実は銀行が定める本来の金利ではありません。店頭金利(基準金利)から大幅な引下げ(優遇)を適用した後の数字です。この仕組みを知らないと、金利の比較も将来の上昇リスクの見積もりも正しくできません。

また、変動金利と固定金利では「金利が何に連動して決まるか」がまったく異なります。変動は日銀の政策金利、固定は長期金利(10年国債利回り)に連動するため、動くタイミングも動き方も違うのです。

この記事では、優遇金利の仕組み、変動・固定それぞれの金利の決まり方、誤解の多い5年ルール・125%ルール、そして金利差が総返済額に与える影響を、初めての人にもわかるよう順番に解説します。

店頭金利と優遇金利の仕組み

銀行の住宅ローン金利は「店頭金利(基準金利)-引下げ幅(優遇幅)=適用金利」という構造になっています。例えば店頭金利が2.475%で引下げ幅が2.1%なら、実際に適用されるのは0.375%です。広告に載る低い数字は、この優遇後の適用金利です。

重要なのは、変動金利で将来見直されるのは店頭金利のほうで、引下げ幅は契約時に決まり完済まで固定されるのが現在の主流だという点です。つまり借入後に「優遇が終わって金利が跳ね上がる」ことは原則ありませんが、優遇幅は審査結果や取引条件によって人ごとに異なります。

ただし、引下げ幅の適用には「給与振込口座の指定」「カード契約」などの条件が付く場合があり、条件を満たさなくなったり返済を延滞したりすると優遇が縮小・打ち切りになることがあります。契約書の優遇条件は必ず確認しましょう。

変動金利と固定金利は何で決まるのか

変動金利の店頭金利は、多くの銀行で短期プライムレート(銀行が優良企業に貸し出す際の最優遇金利)を基準にしています。短期プライムレートは日本銀行の政策金利(短期金利)に連動して動くため、変動金利が上がるかどうかは、実質的に日銀が利上げをするかどうかで決まります。

一方、全期間固定型や固定期間選択型の金利は、長期金利——代表的には10年国債の利回り——を基準に毎月見直されます。長期金利は市場の将来予想を織り込んで動くため、日銀が実際に利上げする前から上昇し始めます。つまり固定金利は変動金利より先に上がるのが通常で、「金利が上がり始めてから固定に切り替えよう」という作戦は、そのときすでに固定金利が上がってしまっているため思いどおりにいかないことが多いのです。

5年ルール・125%ルールの正確な理解

変動金利(元利均等返済)には、多くの銀行で「5年ルール」と「125%ルール」があります。5年ルールは金利が見直されても毎月の返済額を5年間変えないルール、125%ルールは5年ごとの返済額改定時に新しい返済額を従前の1.25倍までに抑えるルールです。

誤解してはいけないのは、これらは支払総額を減らすルールではないという点です。金利が上がっても返済額が変わらない間、内訳の利息部分が増えて元金部分が減るため、元金の減りが遅くなります。極端に金利が上がると利息が毎月の返済額を超え、払いきれない「未払利息」が発生して後で精算が必要になることもあります。ルールは急激な家計ショックを緩和する仕組みであって、利息を免除する仕組みではありません。

5年ルール・125%ルールを採用していない銀行もあります(その場合、金利見直しがすぐ返済額に反映されます)。また元金均等返済には適用されないのが一般的です。変動金利を検討する際は、自分が借りる銀行にこのルールがあるかを必ず確認してください。

金利タイプは3種類|それぞれの特徴

住宅ローンの金利タイプは、変動金利型・全期間固定型・固定期間選択型の3つに大別されます。固定期間選択型は「当初10年固定」のように一定期間だけ金利を固定するタイプで、固定期間終了後はその時点の金利で変動型か再固定を選びます。

注意したいのは、固定期間選択型では固定期間終了後に引下げ幅が当初より縮小される商品が多いことです。当初期間の低金利だけを見て選ぶと、期間終了後に市場金利が変わらなくても適用金利が上がることになります。終了後の引下げ幅まで含めて比較しましょう。

金利タイプ3種類の比較
項目変動金利型固定期間選択型全期間固定型
当初の金利水準最も低い中間高め
金利の連動先短期プライムレート(政策金利)固定期間中は固定・終了後は選び直し長期金利(借入時に確定)
見直しタイミング半年ごと固定期間終了時なし
5年・125%ルール多くの銀行で適用固定期間中は関係なし関係なし
注意点未払利息のリスク終了後の優遇幅縮小当初負担が大きい

金利差は総返済額にどう効くか

0.5%1.0%——数字だけ見ればわずかな差ですが、35年の長期返済では総返済額に数百万円の差となって表れます。借入4,000万円35年・元利均等返済で金利水準別に比較してみましょう。

金利1%の差(0.5%1.5%)で総返済額は約783万円1.4%の差(0.5%1.9%)では約1,118万円増えます。変動金利を選ぶ場合は、現在の低金利ではなく「金利が1〜1.5%上がった場合の返済額」で家計が耐えられるかを確認しておくことが重要です。

試算例:借入4,000万円・35年・元利均等返済の金利別比較

  • 金利0.5%:毎月103,834円/総返済額約4,361万円
  • 金利1.0%:毎月112,914円/総返済額約4,742万円
  • 金利1.5%:毎月122,473円/総返済額約5,144万円
  • 金利1.9%:毎月130,461円/総返済額約5,479万円
  • 金利が0.5%から1.9%に上がると、毎月の返済額は約2.7万円、総返済額は約1,118万円の増加になります。

よくある質問

広告の「変動金利0.3%台」は誰でも借りられる金利ですか?
いいえ。広告の金利は店頭金利から最大の引下げ幅を適用した「最優遇」の適用金利で、実際の引下げ幅は審査結果(年収・勤務先・物件・自己資金など)によって人ごとに決まります。審査の結果、広告より高い金利を提示されることもあるため、仮審査を受けて自分に適用される金利を確認することが必要です。
5年ルールがあれば金利が上がっても安心ですか?
安心とは言えません。5年ルールで変わらないのは毎月の返済額だけで、金利上昇分の利息は確実に発生しています。返済額に占める利息の割合が増えて元金の減りが遅くなり、5年後の改定では125%を上限に返済額が増えます。また急激な金利上昇時には未払利息が発生するリスクもあります。さらに、そもそも5年ルールを採用していない銀行もあるため、契約条件の確認が不可欠です。
金利が上がり始めてから固定金利に借り換えれば良いのでは?
現実には難しい作戦です。固定金利は10年国債利回りなどの長期金利に連動し、市場の利上げ予想を織り込んで政策金利より先に上昇します。日銀の利上げで変動金利が上がる頃には固定金利はすでに上がった後、ということが通常です。固定への切り替えを視野に入れるなら、金利動向を待つのではなく、家計が許容できる上昇幅をあらかじめ決めておく考え方が現実的です。
固定期間選択型の「当初10年固定」の注意点は?
固定期間が終わった後の扱いに注意が必要です。終了後はその時点の金利で変動型か再固定を選びますが、多くの商品で当初より引下げ幅(優遇幅)が縮小されるため、市場金利が同じでも適用金利は上がりがちです。将来の返済額が読めない点では変動型に近いリスクを持つため、当初期間の金利の低さだけで選ばないようにしましょう。

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