ワンルームマンション投資を始める前に考えること10項目

ワンルームマンション投資の勧誘を受けて「悪くない話かもしれない」と感じている方に向けて、契約前に立ち止まって確認すべきことを整理します。本記事は投資をすすめるものではなく、営業トークを自分で検証し、勧誘被害を避けるための消費者保護の観点で書いています。

投資用マンションをめぐっては、国民生活センターに強引な勧誘や説明と異なる収支に関する相談が寄せられているとされます。数千万円の借金を伴う契約である以上、「営業担当者の説明を信じるかどうか」ではなく「自分で数字と条項を確認できるかどうか」が判断の基準になります。

営業トークを一つずつ検証する——よくある説明とその裏側

勧誘で使われる定番の説明には、それぞれ確認すべき裏側があります。どの説明も「まったくの嘘」とは限りませんが、都合のよい面だけを切り取っている場合が多いため、下の表のように反対側から検証してください。

検証のポイントは「その効果はいつまで続くのか」「代わりに何を失うのか」を必ず尋ねることです。回答が曖昧だったり、質問すると話題を変えたりする営業は、その時点で信頼に値しません。

よくある営業トークと確認すべきポイント
営業トーク確認すべき裏側
「節税になります」給与所得との損益通算による節税は、登記費用など初年度の諸費用によるところが大きく、継続しない場合が多いとされる。2年目以降の税効果を数字で示してもらう
「年金代わりになります」完済して家賃を受け取る頃には築30年超。そのときの家賃水準・空室率・修繕費でも成り立つのか。修繕積立金の増額予定も確認する
「生命保険代わりになります(団信)」同じ保障を掛け捨ての生命保険で買った場合の保険料と比較する。保障のために毎月の手出しと数千万円の借金を負う合理性があるか
「家賃保証があるので安心です」サブリースの保証賃料には数年ごとの見直し・減額条項があるのが一般的とされる。免責期間・解約条件・減額の履歴を書面で確認する
「今日だけの特別条件です」数十年の契約を即日で決めさせる合理的な理由はない。期限を理由に急がせるのは、比較検討させないための典型的な手口とされる

収支シミュレーションのどこを見るか——織り込まれていない前提を探す

営業資料の収支シミュレーションは、前提しだいでいくらでもよく見せられます。見るべきは結論の数字ではなく前提です。空室率(入居率100%になっていないか)、家賃下落率(35年間家賃が一定になっていないか)、金利(変動金利の上昇シナリオがあるか)、修繕(設備交換・原状回復修繕積立金の増額が入っているか)の4点は最低限確認してください。

そのうえで、悲観シナリオ(空室が長引き、家賃が下がり、金利が上がる)でも自分の家計が耐えられるかを、自分の手で再計算します。営業側のシミュレーションを自分で再現できないなら、その商品を理解できていないということです。

「シミュレーション上は黒字」でも、それは前提が正しい場合の話です。前提の根拠(周辺の実際の成約家賃・空室状況)を一次情報で確かめる習慣が、勧誘被害への最大の防御になります。

出口戦略を先に考える——誰に、いくらで売るのか

購入を考える前に、売却を考えます。中古ワンルームの買い手はほぼ投資家であり、価格はその時点の家賃から逆算した収益価値で決まります。「10年後に、想定家賃○万円なら、利回り○%で買う投資家がいるとして、売却価格は約○万円。その時点のローン残債は○万円」という計算を、契約前に自分でできるかが分かれ目です。

売却価格が残債を下回る期間は、実質的に撤退できません。また、区分ワンルームは株式のようにすぐ売れる資産ではなく、売却には数か月単位の時間と仲介手数料等の費用がかかります。この流動性の低さ自体がリスクであることは、営業資料ではほとんど強調されません。

自宅の住宅ローンへの影響——与信枠は有限

見落とされがちですが、投資用ローンを組むと金融機関の与信枠を大きく使うため、その後に自宅を買おうとしたとき住宅ローンの審査が通りにくくなる、あるいは希望額を借りられなくなる場合があります。返済負担率の審査では投資用ローンの返済も原則として負債に含まれるためです。

「家賃収入があるから相殺される」と説明されることもありますが、金融機関が家賃収入をどこまで収入として評価するかは審査次第であり、保証はありません。将来自宅を購入する予定があるなら、その計画への影響を先に確認すべきです。

独身の若手会社員が勧誘されやすい背景には、「与信枠が空いていて、住宅ローンをまだ使っていない」という事情があるといわれます。自分の与信枠は、まず自分の住まいのために温存するという考え方も十分に合理的です。

契約前チェックリスト10項目

ここまでの内容を、契約前に確認すべき10項目のチェックリストにまとめます。1つでも「確認していない」「答えられない」項目があるうちは、契約すべき段階にありません。

  • 周辺の中古成約相場を自分で調べ、購入価格と比較したか
  • 周辺の実際の募集家賃を調べ、想定家賃が過大でないか確認したか
  • 空室率・家賃下落・金利上昇・修繕費を織り込んで収支を自分で再計算したか
  • 毎月の手出し額と、保有期間全体での手出し累計を把握したか
  • 「節税効果」を初年度だけでなく2年目以降の数字で確認したか
  • サブリース(家賃保証)の減額条項・免責期間・解約条件を書面で読んだか
  • 10年後・20年後の想定売却価格とローン残債の関係を計算したか
  • 自宅購入など将来のライフプランへの与信面の影響を確認したか
  • 契約を急がされていないか(即日契約・「今日だけの条件」ではないか)
  • 第三者(消費生活センター・利害関係のない専門家)に相談したか

クーリングオフと相談先——迷ったら188へ

宅建業者が売主となる物件の売買では、事務所等以外の場所(喫茶店・ファミレス・自宅・勤務先など)で買受けの申込みをした場合、クーリングオフについて書面で告げられた日から8日以内であれば、書面(電磁的方法を含む)で無条件に申込みの撤回・契約の解除ができるとされています(宅地建物取引業法)。電話勧誘から喫茶店での契約という典型的な流れは、この対象になりうる類型です。

ただし、引渡しを受けてかつ代金を全額支払った場合など適用されない条件もあり、要件の判断は容易ではありません。契約してしまって不安がある場合は、日数を数えながら悩むのではなく、すぐに消費者ホットライン188に電話して最寄りの消費生活センターにつないでもらってください。強引な勧誘そのものについては、免許行政庁(国土交通省の地方整備局または都道府県の宅建業担当窓口)への情報提供もできます。

「契約前に第三者に相談する」ことを面倒がらないのが、結局いちばんの防御策です。相談したことで不利になることは何もありません。

よくある質問

「節税になるから実質負担はない」と言われました。本当ですか?
損益通算による節税効果は初年度の諸費用(登記費用・ローン関係費用など)によるところが大きく、2年目以降は小さくなる場合が多いとされます。また節税は赤字の裏返しであり、節税額より収支の赤字が大きければ家計全体ではマイナスです。「2年目以降の税効果」と「35年間の手出し累計」を数字で示してもらい、自分で検算してください。
契約を急がされています。どうすればよいですか?
「今日契約すれば値引き」「この物件は今日で終わり」といった期限を理由にした勧誘は、比較検討をさせないための典型的な手口とされます。数千万円の借金を伴う契約を即日で決める合理的理由はありません。いったん持ち帰り、周辺相場の確認と収支の再計算、第三者への相談を経てから判断してください。急がせること自体を断る理由にして構いません。
投資用マンションを買うと自宅の住宅ローンは組めなくなりますか?
一律に組めなくなるわけではありませんが、投資用ローンの返済は審査上の負債に含まれるのが原則のため、借入可能額が減ったり審査に通りにくくなったりする場合があります。家賃収入がどこまで収入評価されるかは金融機関によります。自宅購入の予定・希望があるなら、投資用ローンを先に組むことの影響を必ず事前に確認してください。
喫茶店で申込書にサインしてしまいました。取り消せますか?
宅建業者が売主で、事務所等以外の場所で申し込んだ場合は、クーリングオフの告知を受けた日から8日以内なら書面で無条件解除できるとされています。喫茶店での申込みは対象になりうる典型例ですが、要件の判断が必要なため、書類一式を手元に置いてすぐ消費者ホットライン188に電話し、消費生活センターの助言を受けてください。早く動くほど選択肢が残ります。
どこまで確認できたら契約してよいのでしょうか?
本記事のチェックリスト10項目にすべて自分の言葉で答えられることが最低ラインです。特に「悲観シナリオでの手出し累計」「想定売却価格と残債の関係」を自分で計算できないうちは、商品を理解できていない状態です。そのうえでなお迷いがあるなら、利害関係のない第三者(消費生活センターや報酬体系が明確な専門家)に資料を見せて意見を求めてください。

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