家賃を滞納するとどうなる?時系列のリスクと今すぐやること

家賃を1回払えなかっただけで、すぐに部屋を追い出されることはありません。しかし滞納を放置すると、督促→保証会社の立て替え(代位弁済)→契約解除→明渡訴訟→強制執行という決まった流れで事態が進み、後戻りできる余地がどんどん狭くなっていきます。

重要なのは、この流れのどの段階でも「連絡して支払う意思を示すこと」が最大の防御になるという点です。逆に、連絡を絶って放置することが最も事態を悪化させます。

本記事では、滞納から明け渡しまでの時系列、「3ヶ月」が契約解除の目安といわれる理由、信用情報への影響、そして家賃が払えないときに今すぐやるべきことと公的な支援制度を、2026年7月時点の情報で解説します。

滞納から強制執行までの時系列

滞納後の展開は、保証会社を利用しているかどうかで細部は変わりますが、大枠は共通しています。近年の賃貸契約は大半が保証会社付きのため、滞納の初期から保証会社が督促の主体になるケースが一般的です。

各段階の期間は目安であり、貸主や保証会社の方針によって前後します。確実にいえるのは、後の段階に進むほど、遅延損害金・訴訟費用・強制執行費用が上乗せされ、支払うべき総額が滞納家賃だけでは済まなくなることです。

家賃滞納後の一般的な時系列(2026年7月時点の目安)
時期起きることこの段階でできること
滞納直後〜1週間電話・書面・SMSでの督促連絡して支払日を約束すればほぼ影響なし
1〜2ヶ月保証会社が代位弁済し、借主へ求償(一括請求)。連帯保証人にも連絡分割払いの相談・公的支援の申請
3ヶ月前後信頼関係の破壊を理由に契約解除の通知(内容証明)全額+損害金の支払いで解除を回避できる場合も
契約解除後建物明渡請求訴訟の提起(判決まで数ヶ月)和解(分割・退去時期の猶予)の余地あり
判決確定後強制執行の申立て→催告→断行(荷物の搬出)執行前に自主退去して費用増を避ける

なぜ「3ヶ月」が契約解除の目安なのか——信頼関係破壊の法理

賃貸借契約は借主の生活の基盤であるため、判例上、1回や2回の滞納で貸主が直ちに契約を解除することは原則として認められていません。解除が認められるのは、滞納によって貸主と借主の信頼関係が破壊されたといえる場合——いわゆる「信頼関係破壊の法理」です。

実務では、概ね3ヶ月分程度の滞納が続くと信頼関係の破壊が認められやすくなるといわれます。ただしこれは機械的な基準ではなく、それまでの滞納歴、督促への対応(連絡を無視したか、誠実に相談したか)、支払い意思の有無が総合的に判断されます。

逆にいえば、滞納が3ヶ月未満でも、督促を無視し続ける・嘘の支払い約束を繰り返すといった不誠実な対応は、信頼関係の破壊を早める方向に働きます。「金額」と同じくらい「対応」が見られていると考えてください。

信用情報と次の部屋探しへの影響

保証会社が信販系(クレジットカード会社系)の場合、家賃の支払い状況は信用情報機関(CIC等)に登録されます。滞納や代位弁済の情報が事故情報として記録されると、その後5年程度、クレジットカードの新規作成や住宅ローン・自動車ローンの審査に通りにくくなる可能性があります。

信販系でない独立系の保証会社でも、業界団体(全国賃貸保証業協会など)の加盟社間で代位弁済などの情報が一定期間共有される仕組みがあります。このため、滞納歴があると次に部屋を借りるときの保証会社審査に通りにくくなり、住み替えの選択肢が狭まります。

自分の契約の保証会社が信販系かどうかは、賃貸借契約書や保証委託契約書の会社名で確認できます。信販系であれば、家賃滞納が「家の問題」にとどまらず、将来の住宅ローン審査にまで波及しうると認識しておきましょう。

やってはいけないこと

家賃が払えない状況で焦ると、かえって事態を悪化させる行動を取りがちです。次の行動は避けてください。

  • 督促の電話・書面を無視して放置する(信頼関係破壊の認定を早め、分割相談の余地を失う)
  • 連絡を絶ったまま荷物を残して退去する(いわゆる夜逃げ。滞納賃料・原状回復費の請求は消えず、連帯保証人に請求が向かう)
  • 消費者金融やカードのキャッシングで家賃を自転車操業する(高金利の借金に置き換わるだけで根本解決にならない)
  • 「来週払います」と守れない約束を繰り返す(嘘の約束は誠実な相談より心証を悪くする)
  • 貸主からの解除通知や訴状を開封せず放置する(訴状を無視すると欠席判決で確定し、強制執行へ一直線に進む)

今すぐやること——連絡・分割相談・公的支援

第一にやるべきことは、貸主または管理会社(保証会社から督促が来ているなら保証会社)への連絡です。「いつまでに・いくら払えるか」を具体的に伝え、一括が無理なら分割払いを相談します。貸主側にとっても、訴訟や強制執行は時間と費用がかかるため、誠実に支払う意思のある借主との話し合いには応じる動機があります。

並行して、公的支援を確認しましょう。代表的なのが「住居確保給付金」です。離職・廃業や、やむを得ない休業等による収入減少で家賃が払えない場合に、自治体が家賃相当額(地域ごとの上限あり)を原則3ヶ月、一定の条件で最長9ヶ月、貸主側へ直接支給する制度です。収入・資産・求職活動などの要件があり、窓口は自治体の自立相談支援機関です。制度の細部は見直されることがあるため、最新は公式サイトで確認してください。

そのほか、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付、状況によっては生活保護(住宅扶助)も選択肢になります。借金が家計を圧迫しているなら、法テラスで無料の法律相談(収入等の要件あり)を受け、債務整理を含めて立て直しを検討する道もあります。

滞納1ヶ月目に連絡と相談ができていれば、ほとんどのケースは分割払いなどの話し合いで収まります。恥ずかしさや気まずさで連絡を先延ばしにすることが、結果的に最も高くつきます。

よくある質問

家賃を1ヶ月滞納しただけで追い出されますか?
原則としてありません。賃貸借契約の解除には貸主と借主の信頼関係が破壊されたと認められる程度の事情が必要で、判例上、1ヶ月程度の滞納だけで解除が認められることはまれです。実務では概ね3ヶ月分程度の滞納が目安といわれます。ただし督促を無視するなど不誠実な対応を重ねると、より短期間でも解除が認められやすくなります。滞納したらすぐ連絡し、支払日を約束することが重要です。
保証会社が家賃を立て替えてくれたら、滞納は解消されたことになりますか?
なりません。保証会社の代位弁済は、貸主への支払いを立て替えただけで、借主の債務は保証会社への返済義務(求償債務)に置き換わります。多くの場合、一括での返済を求められ、遅延損害金も加算されます。また代位弁済の事実は保証会社の審査情報として記録され、信販系の場合は信用情報機関にも登録されるため、むしろ事態は一段階悪化したと考えるべき局面です。
住居確保給付金はいくら、いつまで受け取れますか?
支給額は地域ごとに定められた上限(生活保護の住宅扶助基準額が基準)の範囲内で家賃相当額、期間は原則3ヶ月で、求職活動等の要件を満たせば延長により最長9ヶ月です。収入基準・資産基準・誠実な求職活動などの要件があり、支給は借主本人ではなく貸主・管理会社等へ直接行われます。申請窓口は市区町村の自立相談支援機関です。要件や運用は見直されることがあるため、最新は厚生労働省や自治体の公式サイトで確認してください。
強制執行になると具体的にどうなりますか?
明渡訴訟の判決等に基づき貸主が強制執行を申し立てると、まず執行官が訪れて明渡しの期限を催告し、それでも退去しない場合は断行日に鍵が開けられ、荷物が強制的に搬出・保管されます。執行費用は数十万円規模になることがあり、原則として借主に請求されます。ここまで進むと交渉の余地はほぼないため、遅くとも訴訟段階までに和解や自主退去を検討すべきです。
家賃が払えないまま黙って退去(夜逃げ)したらどうなりますか?
滞納家賃・遅延損害金・原状回復費用・残置物の処分費用の支払い義務は退去後も消えず、保証会社や貸主から本人と連帯保証人に請求が続きます。所在が分からなくても公示送達という方法で訴訟は進められ、判決が確定すれば給与や預金の差押えも可能になります。連帯保証人が親族なら、その人に督促と請求が集中します。黙って消えるのではなく、退去するにしても貸主と精算方法を合意してからにすべきです。

参考情報