『住宅ローンはこうして借りなさい』要約|65歳完済ルールは今も有効か

この記事の要点

  • 骨子は2つ。「借りられる額」ではなく家計から逆算した「返せる額」で借りること、そしてどんなに遅くとも65歳までに完済できる計画にすることです
  • 初版2003年から改訂を重ねる累計14万部の定番。銀行・不動産会社のセールストークの「カラクリ」を先回りで教えてくれるのが持ち味です
  • 現行の改訂7版は2019年刊・超低金利期の本。骨子は今も有効ですが、金利・税制の各論は2026年の水準で読み替えが必要です

住宅ローン本の「定番」を1冊挙げるなら、多くの人が名前を出すのがファイナンシャルプランナー深田晶恵さんの『住宅ローンはこうして借りなさい』(ダイヤモンド社)です。初版は2003年。以来、金利や制度の変化に合わせて改訂を重ね、現行の改訂7版まで累計14万部読み継がれてきました。

一貫した主張はシンプルです。銀行が貸してくれる額と、安心して返せる額は別物。返せる額は年収からではなく、いまの家賃と貯蓄ペースという「実績のある家計の数字」から逆算する。そして完済はどんなに遅くとも65歳まで——見栄えの良い物件からではなく、家計から出発する組み立てです。

当サイトのシミュレーターが「実質負担(ローン+維持費)」を軸にしているのと同じ発想の本であり、これから借りる人が最初に読む1冊として紹介します。あわせて、刊行が2019年である以上、2026年に読むなら補正すべき点も整理します。

3分でわかる要約:本書のルールはこの5点

構成は、セールストークの裏側を暴く「カラクリ編」から、資金計画・ローン選び・ケーススタディ・借り換えまでの実践5章+チェックシート付録。著者が繰り返し説くルールの核は次の5点です。

  • 「借りられる額」で予算を決めない。現在の家賃+年間の貯蓄可能額から、購入後の維持費を差し引いて「無理なく返せる額」を逆算する
  • 完済はどんなに遅くとも65歳60歳時点のローン残高が退職金に頼らず返せる水準(著者の目安で600〜700万円以内)に収まる計画にする
  • 借りすぎの抑制を最優先にする(著者は30代・世帯年収600〜700万円で借入3,000万円まで、高収入の共働きでも4,000万円以内といった目安を示す)
  • 繰り上げ返済は万能ではない。教育費などこれから増える支出のための手元資金を削ってまで急がない
  • 金利タイプは損得の予想ではなく家計の耐性で選ぶ。全期間固定と10年固定を組み合わせる「ミックス返済」など、リスクを分ける組み方も選択肢

この本の持ち味——「売る側の論理」を先回りで教えてくれる

本書の第1章は「カラクリ編」と題して、モデルルームのセールストークや住宅チラシの見せ方、住宅購入の「無料相談」の裏側を扱います。買い手が最初に出会う情報は、ほぼすべて売る側が設計したもの——この前提を最初に叩き込んでくれるのが、20年以上読み継がれてきた理由です。

また、共働き世帯へ向けた注意(保育園探し=保活を踏まえた家探し)や、地方在住者向けの銀行の見方(県内上位行の金利チェック)など、読者の状況別の各論が厚いのも実用書としての強みです。

本書の「返せる額の逆算」は、当サイトのシミュレーターでそのまま実行できます。いまの家賃と毎月の貯蓄額を出発点に、維持費込みの実質負担が家賃+貯蓄の範囲に収まる借入額を探してみてください。

読むときの注意——2019年の金利前提は補正して読む

現行の改訂7版は2019年1月刊。当時は変動0.6%前後・10年固定1%前後という超低金利期で、第5章の「低金利への借り換えはラストチャンス」や消費税10%への駆け込み購入の是非といった論点は、その時代のものです。2026年の現実は、政策金利1.0%程度・変動店頭金3.125%(大手行)・フラット353%台。住宅ローン金利の推移で整理したとおり、金利の各論はそのままでは使えません。

住宅ローン控除も刊行後の2022年改正で控除率0.7%ベースへ変わっており、本書の税制記述は現行制度と異なります。控除の現行ルールは当サイトの住宅ローン控除の記事で確認してください。

一方で、本書の骨子——返せる額からの逆算・65歳完済・借りすぎ抑制——は金利水準に依存しない主張で、著者自身が2024〜2026年の連載でも金利上昇局面に合わせて同じ路線の発信を続けています。「各論は最新情報で、骨格は本書で」という読み方が正解です。

書評では、不動産取引の実務(仲介手数料等)の記述に確認が必要な箇所があるという指摘もあります。FPの本として家計側の設計に強みがある一方、取引実務の細部は仲介会社・司法書士など実務側の情報で補完してください。

よくある質問

『住宅ローンはこうして借りなさい』はどんな内容の本ですか?(要約)
ファイナンシャルプランナー深田晶恵さんによる住宅ローンの定番実用書です。骨子は「銀行が貸してくれる額ではなく、家賃と貯蓄ペースから逆算した返せる額で借りる」「完済はどんなに遅くとも65歳まで」の2点。セールストークのカラクリ、資金計画の立て方、金利タイプの選び方、借り換えまでを、ケーススタディとチェックシート付きで解説します。初版2003年から改訂を重ねた累計14万部のロングセラーです。
「65歳完済」は金利が上がった今でも守るべきルールですか?
むしろ金利が上がった今のほうが重要度は増しています。定年後にローンが残る計画は、収入減と金利上昇の両方に無防備だからです。35年ローンを組むなら、繰り上げ返済や退職金に頼らず65歳までに終わる借入額か、60歳時点の残高がいくらになるかを先に確認するのが本書流です。当サイトのシミュレーターでも年齢と完済時期を確認できます。
改訂7版(2019年)の内容は古くなっていませんか?
金利・税制の各論は古くなっています。刊行時は超低金利期で、借り換え推奨や消費税駆け込みの論点は当時のもの、住宅ローン控除も2022年改正前の記述です。一方、返せる額からの逆算・借りすぎ抑制・65歳完済という骨格は金利水準に依存せず、著者も近年の連載で同じ考え方を金利上昇局面に当てはめて発信しています。骨格を本書で学び、数字は最新情報で補うのが実用的です。
この本と当サイトのシミュレーターはどう使い分ければいいですか?
本書で「考え方の順番」を身につけ、シミュレーターで自分の数字を当てはめるのが効率的です。具体的には、本書の逆算式(家賃+貯蓄可能額−購入後の維持費)で毎月の上限を決め、シミュレーターの実質負担(ローン+管理費・修繕積立金固定資産税)がその範囲に収まる借入額・物件価格を探します。完済年齢と60歳時残高もあわせて確認してください。

理解度チェック

Q. 本書の考え方では、銀行の審査に通った借入額=安心して返せる額である。

答え: ❌ — 本書の出発点は「借りられる額」と「返せる額」の区別です。返せる額は、現在の家賃と貯蓄ペースから購入後の維持費を差し引いて自分の家計から逆算するもので、銀行の審査上限とは別物として扱います。

参考情報