住宅ローン金利の推移|15年動かなかった変動金利が3年で3段階上がった

この記事の要点

  • 日銀の政策金利は2024年3月のマイナス金利解除後、4回の利上げで1.0%程度(2026年6月〜)に。1995年以来の水準
  • 変動金利の店頭金利は約15年2.475%のままだったが、2024年10月以降3回引き上げられ大手行で3.125%(2026年3月〜)に
  • フラット35(21〜35年・融資率9割以下の最頻金利)は2026年8月に3.29%1年前(1.87%)から+1.42ポイントの急上昇
  • 3,500万円35年の試算では、金利1%3%の差は月々約3.6万円・総返済で約1,500万円

住宅ローン金利は、いま歴史的な転換点にあります。2026年8月時点で、日銀の政策金利は1.0%程度(1995年以来の水準)、フラット35の最頻金利は3.29%、大手行の変動金利の店頭金利は3.125%。「超低金利が当たり前」だった2010年代の感覚は、すでに通用しなくなりました。

この記事では、日銀・住宅金融支援機構・財務省の公式データにもとづいて、政策金利・変動金利・フラット35の推移を整理し、金利の違いが毎月の返済額にどれだけ効くかを実際の試算で示します。将来の金利がどうなるかの予測はしません——過去と現在の事実を、これから借りる人・すでに借りている人が判断に使える形で並べます。

政策金利の推移|マイナス金利解除から2年強で1.0%へ

出発点は日銀の政策金利です。2016年1月に導入されたマイナス金利(▲0.1%)8年続き、この間に住宅ローンの超低金利時代が定着しました。転機は2024年3月19日のマイナス金利解除(17年ぶりの利上げ)。以降、約2年強で4回の利上げが行われ、2026年6月に1.0%程度へ到達しました。

政策金利(無担保コールレート)は、銀行の短期プライムレートを通じて変動金利に直結します。また利上げ局面では長期金利(10年国債利回り)も上がりやすく、こちらはフラット35など固定金利の水準を押し上げます。つまりこの表の動きが、次の2つの節で見る住宅ローン金利の上昇の源流です。

日銀の政策金利の推移(金融政策決定会合の公表資料より)
決定日内容政策金利の水準
2016年1月29日マイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入▲0.1%
2024年3月19日マイナス金利解除(17年ぶりの利上げ)0〜0.1%程度
2024年7月31日追加利上げ0.25%程度
2025年1月24日追加利上げ0.5%程度
2025年12月19日追加利上げ0.75%程度
2026年6月16日追加利上げ(1995年以来の水準)1.0%程度

変動金利の推移|2.475%のまま約15年、そこから3段階の引き上げ

変動金利の基準になる店頭金利(基準金利)は、多くの銀行で「短期プライムレート+1%」で決まります。この店頭金利は、2009年頃から2024年まで約15年間、大手行で2.475%のまま一度も動きませんでした。変動金利の「低くて安定」というイメージは、この15年間に作られたものです。

それが2024年以降、利上げを追いかける形で動き始めます。2024年10月に2.625%、2025年春に2.875%、そして2025年12月の利上げを受けて2026年3月からは大手行で3.125%へ。約15年ぶりに動いた店頭金利は、2年足らずで0.65ポイント上がりました(反映時期は銀行により数カ月の差があります。また2026年6月の利上げ分は、2026年8月末時点で大手行の店頭金利にはまだ反映されていません)。

店頭金利の上昇は、すでに変動金利で借りている人の適用金利にもそのまま波及します。多くの契約では「店頭金利−引き下げ幅」で適用金利が決まり、引き下げ幅は契約時のまま固定だからです。5年ルールで毎月の返済額が据え置かれていても、返済額に占める利息の割合が増えており、負担が消えたわけではありません。変動金利が上がったときの返済額への影響は別記事で詳しく試算しています。

なお、新規に借りる人の実際の適用金利は、店頭金利から各行の引き下げ幅(優遇幅)を差し引いた水準です。引き下げ競争により、店頭金利の上昇がそのまま新規の適用金利差になるとは限りません。最新の適用金利は各行の公表値で確認してください。

変動金利の店頭金利(大手行)の推移
時期店頭金利背景
2009年頃〜2024年9月2.475%約15年間変わらず(短プラ1.475%)
2024年10月〜2.625%2024年7月の利上げ(0.25%)を反映
2025年春〜2.875%2025年1月の利上げ(0.5%)を反映
2026年3月〜3.125%2025年12月の利上げ(0.75%)を反映

フラット35の推移|最低0.9%の時代から2026年8月の3.29%まで

全期間固定のフラット35(借入期間21〜35年・融資率9割以下)は、長期金利に連動して動きます。史上最低は2016年8月の0.90%(当時は団信保険料が別建ての旧制度)。2017年10月に団信込みの金利体系へ変わった後も、2019年秋の1.11%を底に、2023〜2025年はおおむね1.8〜1.9%で推移していました。

様子が変わったのは2026年です。長期金利(10年国債利回り)が2016年にはマイナス圏(▲0.297%)まで沈んでいたのに対し、2026年8月には2.9%前後と、およそ30年ぶりの水準まで上昇。フラット35も2026年1月の2.08%から8月には3.29%へと、わずか1年で1.42ポイント上がりました。

2017年9月以前の金利(0.90%など)は団信保険料が含まれない旧制度の数字のため、現在の団信込みの金利と単純比較はできません。それでも「1%を切っていた時代」から「3%台」への変化の大きさは、次の節の試算で実感できます。

フラット35(21〜35年・融資率9割以下)の金利の推移(住宅金融支援機構)
時期金利備考
2016年8月0.90%史上最低(団信別建ての旧制度)
2019年9〜10月1.11%団信込みの現行制度での最低水準
2021年度1.3%台
2023〜2025年1.8〜1.9%台おおむね横ばい
2026年1月2.08%2%台に乗せる
2026年8月3.29%最頻金利。1年で+1.42ポイント

金利の差は返済額にどう効くか|3,500万円・35年で試算

推移を「自分ごと」に変換します。借入3,500万円35年元利均等返済(ボーナス払いなし)で、金利だけを変えたときの毎月返済額と総返済額を当サイトのシミュレーターの計算ロジックで試算しました。

0.5%で借りられた時代と、フラット35が3.29%のいまとでは、同じ3,500万円を借りても月々の差が約5万円、総返済額の差は約2,080万円にのぼります。金利1%3%の比較でも月々約3.6万円・総返済約1,500万円の差です。物件の値引き交渉で数十万円を争うより、金利と借入額の設計のほうが桁違いに効くことが分かります。

予算を考える出発点は「いまの金利で、毎月いくらなら無理なく払えるか」です。当サイトのシミュレーターは金利を自由に変えて月々の返済額と維持費込みの実質負担を試算できるので、複数の金利シナリオで比べてみてください。

試算例:3,500万円・35年・元利均等返済の金利別比較

  • 金利0.5% → 毎月90,854円・総返済額 約3,816万円
  • 金利1.0% → 毎月98,799円・総返済額 約4,150万円
  • 金利2.0% → 毎月115,941円・総返済額 約4,870万円
  • 金利3.0% → 毎月134,697円・総返済額 約5,657万円
  • 金利3.29%(2026年8月のフラット35最頻金利) → 毎月140,425円・総返済額 約5,898万円

推移をどう読むか|これから借りる人・すでに借りている人へ

この記事は将来予測をしません。それでも推移から言える確かなことが2つあります。第一に、「変動金利は動かないもの」という前提はすでに崩れたこと。15年間の不変期を根拠に「上がってもわずか」と考えるのは、2024年以降の事実と合いません。第二に、金利は数年で1ポイント以上動き得ること。この振れ幅を前提に、返済額が増えても耐えられる借入額かどうかで判断する必要があります。

これから借りる人は、固定と変動の損得を予想で選ぶのではなく、金利が上がったときに家計が耐えられるかというリスク許容度で選ぶのが基本です。考え方は変動金利と固定金利の選び方の記事にまとめています。

すでに借りている人は、まず自分の適用金利がいくらになったかを銀行からの通知やアプリで確認してください。そのうえで、繰上げ返済や借り換えが有効かは金利差・残高・残期間次第です。判断基準は住宅ローンの借り換えの記事で解説しています。

よくある質問

変動金利はこれからも上がりますか?
将来の金利は日銀の政策次第であり、確実な予測はできません。言えるのは仕組みだけです。政策金利が上がれば短期プライムレートを通じて変動金利の店頭金利に波及し、実際に2024年以降は利上げの数カ月後に店頭金利が追随してきました。予測に賭けるのではなく、金利が1〜2ポイント上がっても返済を続けられる借入額・家計かどうかで備えるのが現実的です。
店頭金利と実際に払う金利は何が違うのですか?
店頭金利(基準金利)は銀行の定価で、実際の適用金利は「店頭金利−引き下げ幅(優遇幅)」で決まります。引き下げ幅は契約時に決まり、原則として完済まで変わりません。そのため店頭金利が上がると、既存の契約者の適用金利も同じ幅だけ上がります。新規契約では銀行間の競争で引き下げ幅が拡大することがあり、店頭金利の上昇ほど適用金利が上がらない場合もあります。
フラット35の3%台は歴史的に見て高いのですか?
住宅金融支援機構が公表している推移で見ると、2026年8月の3.29%は、2016年の0.90%(旧制度)や2019年の1.11%はもちろん、2023〜2025年1.8〜1.9%台と比べても明確に高い水準です。ただし2017年10月に団信込みの金利体系へ変わったため、それ以前の数字との単純比較はできません。「過去10年で最も高い」ことは確かですが、それ以前の時代も含めた評価には制度の違いへの注意が必要です。
金利が上がったので借り換えを検討すべきですか?
適用金利がいくら上がったかと、借り換え先との金利差・残高・残期間・諸費用の4点で判断します。一般に金利差が小さい借り換えは諸費用負けしやすい一方、残高が大きく残期間が長いほど効果は出やすくなります。当サイトの借り換えシミュレーションで、諸費用込みの損益分岐を自分の条件で試算してから判断してください。

参考情報