家を売る流れと期間|査定から引き渡しまでの全ステップ

家の売却は、査定の依頼から引き渡しまでおおむね3〜6ヶ月かかる、段取りの多いプロジェクトです。「売りに出せばすぐ売れる」ものではなく、売出し前の準備(査定・媒介契約)に2〜4週間、売出しから買い手が決まるまでに1〜3ヶ月、契約から決済・引き渡しまでにさらに1〜2ヶ月というのが標準的なペースです。

全体の流れを最初に頭に入れておくと、各段階で「今なにを判断すべきか」が明確になり、不動産会社の提案を受け身でなく検討できるようになります。特に序盤の媒介契約の選び方と売出し価格の決め方は、売却期間と手取り額の両方を左右する重要な分岐点です。

本記事では、売却の全ステップを時系列で図解し、媒介契約3種類の違い、売れないときの見直し順序、引き渡しまでに準備する書類までを、2026年7月時点の制度に基づいて解説します。

売却の全体タイムライン——平均3〜6ヶ月

売却は大きく6つのステップで進みます。住み替えで購入と並行する場合や、相場より高めの価格で様子を見る場合は、これより長くなることも珍しくありません。逆に、相場に沿った価格で駅近など需要の強い物件なら、売出しから数週間で申し込みが入ることもあります。

期間を左右する最大の要因は売出し価格です。相場から乖離した価格は、内覧すら入らないまま時間だけが過ぎる典型パターンになります。売出し前に、国土交通省の不動産情報ライブラリなどで近隣の成約事例を自分でも確認しておきましょう。

家の売却の流れ(標準的には合計3〜6ヶ月)

  1. 査定: 机上査定→訪問査定。複数社に依頼して比較(1〜2週間)
  2. 媒介契約: 一般・専任・専属専任から選択。売出し価格を決定
  3. 売出し・広告: レインズ・ポータル掲載。最初の1ヶ月が最も注目される
  4. 内覧対応: 週末中心。申し込み→価格・条件交渉(1〜3ヶ月)
  5. 売買契約: 手付金(価格の5〜10%程度)を受領。重要事項説明
  6. 決済・引渡し: 契約から1〜2ヶ月後。残代金受領・抵当権抹消・鍵の引き渡し

ステップ1〜2:査定から媒介契約まで

査定には、物件情報と周辺の成約データから概算を出す「机上査定」と、担当者が現地を見て査定する「訪問査定」があります。売る意思が固まっているなら、最終的には訪問査定が必要です。複数社(2〜3社程度)に依頼し、査定額そのものよりも「その価格の根拠(どの成約事例と比べたか)」と「販売戦略の説明」を比較するのがポイントです。

売却を依頼する会社が決まったら、宅地建物取引業法に基づく「媒介契約」を結びます。媒介契約には一般・専任・専属専任の3種類があり、依頼できる会社の数や報告義務が異なります。専任系(専任・専属専任)は契約期間が3ヶ月以内と法律で定められており、更新するかどうかは3ヶ月ごとに見直せます。

査定額は「その価格で売れる保証額」ではありません。他社より突出して高い査定額を出す会社には、まず根拠を確認してください。詳しくは一括査定の記事で解説していますが、高い査定額で契約を取り、後から値下げを促す「高預かり」という営業手法が存在します。

媒介契約3種類の比較(宅地建物取引業法・2026年7月時点)
一般媒介専任媒介専属専任媒介
複数社への依頼できる1社のみ1社のみ
自分で買主を見つけるできるできるできない(必ず仲介経由)
レインズ登録義務なし(任意)契約から7日以内契約から5日以内
販売状況の報告義務なし(任意)2週間に1回以上1週間に1回以上
契約期間法律上の制限なし3ヶ月以内3ヶ月以内
向くケース人気エリアで競わせたい標準的。多くの人向き手厚い報告を受けたい

ステップ3〜4:売出しから内覧・価格交渉

売出しが始まると、物件はレインズ(不動産流通機構のネットワーク)や不動産ポータルサイトに掲載されます。買い手候補の注目が最も集まるのは売出しから最初の1ヶ月です。この期間に内覧が入らないなら、価格か広告(写真・紹介文)に問題があるサインと考えられます。

内覧は週末に集中します。居住中の売却なら、照明をすべて点ける・水回りを重点的に掃除する・においに気を配るといった基本の準備だけでも印象は大きく変わります。購入希望者から「買付証明書(購入申込書)」が入ると、価格や引き渡し時期の交渉が始まります。端数の値引き交渉(例:3,480万円3,400万円)は一般的で、あらかじめ「いくらまでなら応じるか」の下限を決めておくと冷静に判断できます。

内覧前に不要な荷物をトランクルームなどに移して部屋を広く見せるのは、費用対効果の高い工夫です。また、内覧の質問(騒音・日当たり・近隣環境)には正直に答えることが、契約後のトラブル防止にもつながります。

ステップ5〜6:売買契約から決済・引き渡し

条件がまとまったら売買契約です。契約時には宅地建物取引士による重要事項説明が行われ、買主から手付金(売買価格の5〜10%程度が一般的)を受け取ります。契約書には、契約違反時の扱いや、引き渡し後に契約内容と異なる不具合が見つかった場合の売主の責任(契約不適合責任)の範囲が定められるため、免責の範囲・期間は必ず確認してください。

買主が住宅ローンを利用する場合、契約から決済までは融資審査・手続きのため通常1〜2ヶ月かかります。決済日には、残代金の受領、住宅ローン残債の一括返済と抵当権抹消、所有権移転登記、固定資産税等の日割り清算、鍵と関係書類の引き渡しを同じ日に行います。ローンが残っている家の売却手続きの詳細は、オーバーローンの記事で解説しています。

買主のローン審査が通らなかった場合に契約を白紙解除できる「住宅ローン特約」が契約に入っているのが通常です。この場合、受け取った手付金は買主に返還します。手付金は決済まで使わずに保管しておきましょう。

売れないときの見直し順序——価格・写真・会社

3ヶ月経っても申し込みが入らない場合、やみくもに値下げする前に、原因を順番に切り分けます。目安は「内覧が入らないなら露出と価格」「内覧は入るのに決まらないなら物件の見せ方と条件」です。

見直しの優先順位は次のとおりです。まず広告(写真の質・掲載媒体・紹介文)を確認し、次に価格を相場に照らして再検討し、それでも動かなければ媒介契約の切り替え(会社の変更)を検討します。専任系の媒介契約は3ヶ月ごとに更新のタイミングが来るため、そこが見直しの節目です。

  • 内覧が入らない → 掲載写真・紹介文を確認(暗い写真・情報不足は致命的)
  • 内覧が入らない → 売出し価格を成約相場と比較(周辺の「成約」価格。売出し価格ではない)
  • 内覧は入るが決まらない → 部屋の見せ方・においや、価格交渉への柔軟性を再検討
  • 担当者の報告が形式的・活動量が少ない → 媒介契約の更新時に会社の変更を検討
  • 急いでいない場合 → 時期を改める選択肢も(転勤・進学シーズン前は動きが出やすい)

引き渡しまでに準備する書類

売却では段階ごとに多くの書類が必要になります。特に、登記識別情報(いわゆる権利証)と実印・印鑑証明書は決済に必須です。紛失している場合も売却は可能ですが、司法書士による本人確認手続きなどで追加の費用と時間がかかるため、早めに確認しておきましょう。

新築時・購入時の書類(設計図書・建築確認済証・設備の説明書・リフォームの記録など)は、買主の安心材料になり、売りやすさに直結します。捨てずに保管してあるものはすべて担当者に共有しておくのがおすすめです。

  • 登記識別情報(登記済権利証)——決済で必須。紛失時は早めに相談
  • 実印・印鑑証明書(発行3ヶ月以内)・本人確認書類
  • 固定資産税納税通知書(日割り清算に使用)
  • マンション:管理規約・長期修繕計画・管理費等の額がわかる書類
  • 戸建・土地:境界確認書・測量図(境界が未確定なら確定測量が必要になる場合あり)
  • 建築確認済証・検査済証・設計図書・設備の取扱説明書(あれば)
  • 住宅ローン残高証明書(残債がある場合。金融機関への一括返済の事前連絡も必要)

よくある質問

家の売却にはどのくらいの期間がかかりますか?
査定の依頼から引き渡しまで、標準的には3〜6ヶ月です。内訳は、査定と媒介契約に2〜4週間、売出しから買い手決定までに1〜3ヶ月、売買契約から決済・引き渡しまでに1〜2ヶ月が目安です。売出し価格が相場から離れている場合や、需要の弱いエリアではさらに長くかかることがあります。
媒介契約は一般・専任・専属専任のどれを選べばよいですか?
多くの人にとっては、レインズ登録義務と2週間に1回以上の報告義務があり、自分で買主を見つける余地も残る専任媒介がバランスの取れた選択です。都心の人気物件など複数社が積極的に動く見込みがあるなら一般媒介で競わせる選択肢もあります。専任系は契約期間が3ヶ月以内と定められているため、活動に不満があれば更新時に会社を変えられます。
住みながら家を売ることはできますか?
できます。実際、住み替えでは居住中に売り出すケースが多数派です。内覧のたびに片付けと在宅の調整が必要になる負担はありますが、家具のある状態は生活のイメージが伝わりやすいという利点もあります。空き家にしてから売る場合は、住宅ローンや維持費が二重にかかる期間を短くする段取りが重要になります。
売出し価格は査定額どおりにすべきですか?
査定額はあくまで「この程度で成約する見込み」という各社の意見であり、そのまま採用する義務はありません。一般的には、査定額と近隣の成約相場を踏まえ、多少の値引き交渉の余地を織り込んで売出し価格を決めます。ただし相場より大幅に高くすると内覧自体が入らず、結果的に値下げを繰り返して相場以下でしか売れなくなる「さらし物件」化のリスクがあります。
売却を途中でやめることはできますか?
売買契約を結ぶ前であれば、媒介契約を解除して売却を中止できます。専任系の媒介契約期間中の解除は、それまでにかかった広告費等の実費を請求される場合があるため、契約書の解除条項を確認してください。買主と売買契約を結んだ後の解除は、手付金の倍返し(手付倍返し)などの負担が発生します。

参考情報