家の売却にかかる費用と税金|手取り額の計算方法

3,500万円で売れたら3,500万円が手に入る」わけではありません。売却には仲介手数料をはじめとする諸費用がかかり、住宅ローンが残っていれば残債の一括返済も必要です。さらに、購入時より高く売れて利益(譲渡所得)が出た場合には税金もかかります。

費用の中で最も大きいのは仲介手数料で、売買価格3,500万円なら上限で税込約122万円です。一方、税金については、マイホームの売却には3,000万円特別控除という強力な特例があるため、実際には課税されないケースが多数派です。ただし特例を使うには確定申告が必須という落とし穴があります。

本記事では、売却にかかる費用の全体像、譲渡所得税の仕組み(長期・短期の区分)、主な特例、そして手取り額の計算手順を、2026年7月時点の制度に基づいて解説します。自分の条件での手取り額は売却手取りシミュレーターですぐに概算できます。

売却にかかる費用の一覧——目安は売買価格の4〜6%

売却でかかる費用の合計は、仲介手数料が大半を占め、おおむね売買価格の4〜6%程度(税金を除く)が目安です。項目ごとに見ていきましょう。

下表のほかに、住み替えなら引越し費用、空き家にしてから売るならハウスクリーニング代、戸建・土地で境界が未確定なら確定測量費(数十万円規模)がかかることがあります。逆に、リフォームは費用を回収できないことが多く、売却前に大規模に行うのは原則おすすめしません。

家の売却にかかる主な費用(2026年7月時点)
項目金額の目安備考
仲介手数料売買価格×3%+6万円+消費税(上限)400万円超の場合の上限額。成約時のみ発生
印紙税1万円(売買価格1,000万円超5,000万円以下)軽減措置適用後。5,000万円超1億円以下は3万円
抵当権抹消の登録免許税不動産1個につき1,000円土地+建物で2,000円。司法書士報酬が別途1〜2万円程度
ローン一括返済手数料無料〜数万円金融機関・手続き方法により異なる
譲渡所得税・住民税利益が出た場合のみ3,000万円特別控除で課税されないケースが多い(後述)
その他測量費・解体費・クリーニング代など物件の状況により発生

仲介手数料の上限——3%+6万円の意味と800万円以下の特例

仲介手数料は宅地建物取引業法に基づく国土交通省の告示で上限が定められています。本来は価格帯ごとに料率が異なり(200万円以下の部分は5%200万円400万円以下の部分は4%400万円超の部分は3%)、これを一括で計算できるようにしたのが「売買価格×3%+6万円+消費税」という速算式です。売買価格が400万円を超える場合に使えます。

例えば3,500万円の売却なら、3,500万円×3%+6万円=111万円、消費税10%を加えて税込122.1万円が上限です。あくまで「上限」であり、これ以下の設定は自由ですが、実務上は上限額を請求する会社が多数派です。

2024年7月の告示改正で、800万円以下の物件(低廉な空家等)については、売主・買主それぞれから受け取れる仲介手数料の上限が30万円+消費税(税込33万円)に引き上げられました。地方の空き家など「手数料が安すぎて仲介を断られる」問題への対策で、上限適用には媒介契約時の合意が必要です。実家の売却などではこの特例が適用される可能性があります。

「仲介手数料無料・半額」をうたう会社もありますが、その分を売出し価格や販売活動の質で吸収していないかは冷静に見る必要があります。手数料の安さだけで会社を選ぶのは、数百万円単位の売却価格を左右する判断としてはバランスを欠きます。

譲渡所得税の仕組み——「譲渡した年の1月1日」で長期・短期が決まる

売却で利益(譲渡所得)が出ると、給与などとは分離して所得税・住民税が課税されます。譲渡所得は「譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)」で計算します。取得費は購入代金や購入時の諸費用の合計から、建物部分の減価償却費相当額を差し引いたものです。購入時の契約書がなく取得費が不明な場合は、譲渡価額の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使いますが、税負担が大きく重くなるため契約書は必ず探してください。

税率は所有期間で大きく変わります。判定基準は「譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているか」です。実際の所有期間ではなく1月1日時点で判定する点が重要で、例えば2021年3月に購入した家を2026年6月に売ると、実際は5年超保有していても、2026年1月1日時点では5年以下のため「短期譲渡」となり、税率はほぼ2倍になります。

購入から5年前後で売却する場合は、売却時期を数ヶ月ずらすだけで税率が39.63%から20.315%に下がることがあります。利益が出そうな売却では、契約前に必ず「譲渡した年の1月1日時点」での所有期間を確認してください。

譲渡所得の税率(復興特別所得税込み・2026年7月時点)
区分判定(譲渡年の1月1日時点)税率(所得税+住民税)
短期譲渡所得所有期間5年以下39.63%(30.63%+9%)
長期譲渡所得所有期間5年超20.315%(15.315%+5%)
10年超所有の軽減税率(マイホーム)所有期間10年超(3,000万円控除と併用可)課税譲渡所得6,000万円以下の部分:14.21%(10.21%+4%)

3,000万円特別控除——マイホーム売却の最重要特例

自分が住んでいた家(居住用財産)を売った場合、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。つまり売却益が3,000万円以下なら税金はかかりません。マイホーム売却で課税される人が少数派なのは、この特例のおかげです。

適用には主な条件があります。自分が住んでいた家であること(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却)、配偶者や親子など特別な関係者への売却でないこと、前年・前々年にこの特例等を使っていないこと、などです。適用を受けるには譲渡所得の確定申告が必須で、「控除で税額ゼロだから申告不要」とはならない点に注意してください。

3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できません。住み替えで新居に住宅ローン控除を使う場合、新居の入居年とその前2年・後3年の間に旧居の売却でこの控除を使っていると、住宅ローン控除が受けられなくなります。控除額13年分と3,000万円控除による節税額のどちらが大きいか、住み替えでは必ず比較してください。

このほか、所有期間10年超なら軽減税率の特例(3,000万円控除と併用可)、一定の条件で課税を将来に繰り延べる「特定居住用財産の買換え特例」、売却損が出た場合に給与所得等と損益通算・繰越控除できる特例もあります。買換え特例や損失の特例には適用期限が定められ延長を繰り返してきた経緯があるため、利用時は国税庁サイトで最新の期限・要件を確認してください。

手取り額の計算例——3,500万円で売れた場合

手取り額は「売買価格 − 諸費用 − ローン残債 − 税金」で計算します。購入時の価格を大きく上回らない一般的なケースでは、3,000万円特別控除により税金はゼロになることが多く、実質的には「売買価格から諸費用と残債を引いた額」が手取りです。

手付金(売買価格の5〜10%)は契約時に受け取れますが、残代金が入るのは決済日です。住み替えで新居の支払いに充てる場合は、入金のタイミングを資金計画に織り込んでおきましょう。

計算例:売買価格3,500万円・ローン残債2,000万円のマイホーム売却

  • 仲介手数料(上限): 3,500万円×3%+6万円=111万円 → 税込122.1万円
  • 印紙税(軽減後): 1万円/抵当権抹消(登録免許税+司法書士報酬): 約2万円/ローン返済手数料: 約1万円
  • 諸費用合計: 約126万円
  • 手取り額: 3,500万円126万円 − 残債2,000万円 = 約1,374万円
  • 税金: 15年前に3,800万円で購入(減価償却後の取得費約3,200万円と仮定)なら譲渡所得は3,500万 −(3,200万+126万)= 174万円3,000万円特別控除の範囲内で課税なし(要確定申告)
  • ※ 概算です。取得費・減価償却は物件ごとに異なるため、実際の申告時は国税庁の手引きや税理士にご確認ください。

確定申告が必要なケース——「利益ゼロなら不要」ではない

売却した翌年の2月16日〜3月15日に確定申告が必要かどうかは、次のように整理できます。申告漏れは無申告加算税や延滞税の対象になるほか、特例が使えず本来不要な税金を納めることにもなりかねません。

  • 譲渡益が出た(特例を使わない)→ 申告必要。分離課税で譲渡所得税・住民税を納付
  • 譲渡益が出たが3,000万円特別控除等で税額ゼロ → 申告必要(申告が特例適用の条件)
  • 譲渡損失が出て、損益通算・繰越控除の特例を使う → 申告必要
  • 譲渡損失が出て、特例も使わない → 申告義務なし(ただし税務署から「お尋ね」が届くことがあり、回答しておくのが無難)

よくある質問

家の売却費用は全部でいくらくらいかかりますか?
税金を除くと、売買価格の4〜6%程度が目安です。最大の項目は仲介手数料(400万円超の物件で売買価格×3%+6万円+消費税が上限)で、ほかに印紙税(3,500万円の売却なら軽減後1万円)、抵当権抹消費用(登録免許税と司法書士報酬で2〜3万円程度)、ローンの一括返済手数料などがかかります。境界未確定の土地の測量費や解体費が必要な場合は、さらに数十万〜数百万円が加わります。
マイホームを売って利益が出たら必ず税金がかかりますか?
必ずではありません。自分が住んでいた家の売却なら、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があり、売却益が3,000万円以下なら税額はゼロになります。ただしこの特例は確定申告をすることが適用条件のため、税額がゼロでも売却した翌年に申告が必要です。また、住み替え先で住宅ローン控除を使う場合は併用できない点に注意してください。
所有期間5年の判定はいつ時点で行いますか?
売却した年の1月1日時点で判定します。実際の所有期間ではありません。例えば2021年3月取得の家を2026年6月に売却すると、実際の所有期間は5年を超えていますが、2026年1月1日時点では5年以下のため短期譲渡(税率39.63%)になります。この例で長期譲渡(20.315%)にするには2027年1月1日以降の譲渡にする必要があります。
購入時の契約書をなくしてしまいました。税金はどうなりますか?
取得費が証明できない場合、譲渡価額の5%を取得費とみなす概算取得費で計算することになり、売却額の大部分が利益扱いになって税負担が大きく増える可能性があります。まず購入時の不動産会社や仲介会社に契約書の控えがないか確認し、住宅ローンの金銭消費貸借契約書や通帳の記録など、購入額を裏付ける資料が使えるケースもあるため、税務署や税理士に相談してください。
仲介手数料はいつ払いますか?
成功報酬のため、売買契約が成立して初めて支払い義務が生じます。実務上は売買契約時に半金、決済・引き渡し時に残り半金を支払うのが一般的です。売れなかった場合や媒介契約を解除した場合には原則発生しませんが、専任媒介期間中の自己都合解除では広告実費等を請求される場合があります。

参考情報