親の土地に家を建てる|税金・住宅ローン・相続の注意点

「親の土地が空いているから、そこに家を建てれば土地代が浮く」——実際、土地代がかからない分だけ総予算を建物に回せるのは大きなメリットです。ただし、親の土地に家を建てる計画には、土地を買う場合には出てこない論点が3つ付いてきます。税金(借り方によって課税関係が変わる)、住宅ローン(親の土地を担保に入れる必要がある)、そして相続(兄弟姉妹との遺産分割)です。

結論からいえば、税金面は「タダで借りる(使用貸借)」が最もシンプルで、原則として贈与税はかかりません。一方で、住宅ローンでは親の協力(担保提供)が必須になり、相続では「家が建った土地をどう分けるか」という将来の火種を仕込むことにもなります。建てる前に全体像を知っておくことが重要です。

本記事は2026年7月時点の制度に基づく概要です。贈与・相続の課税関係は個別事情(土地の評価額、家族構成、他の財産)で結論が変わるため、実行前に税理士等の専門家に確認し、税制の最新情報は国税庁で確認してください。

タダで借りる「使用貸借」なら原則贈与税はかからない

親の土地を無償で借りて家を建てる関係は、法律上「使用貸借」と呼ばれます。土地を借りる権利には本来大きな経済的価値(借地権)がありますが、親子間の使用貸借では、税務上、この使用権の価値はゼロとして扱われ、土地を無償で使わせてもらっても借地権相当の贈与を受けたとは扱われません。つまり、タダで借りて家を建てること自体に贈与税は原則かかりません。

また、子が土地の固定資産税相当額を親に渡して負担する程度であれば、それは使用貸借の範囲内とされ、賃貸借(地代を取る貸し借り)にはなりません。「タダでは悪いから固定資産税くらいは払う」という自然な形は、税務上も問題になりにくい形です。

ひとつ知っておきたいのは、使用貸借で借りた土地は、将来の相続の際に「貸している土地」としての評価減がないことです。賃貸借で貸している土地(貸宅地)は相続税評価が下がりますが、使用貸借の土地は自用地(親が自分で使っている土地)として満額で評価されます。目先の贈与税がかからない代わりに、相続税の評価では減額がない、と整理しておきましょう。

地代や権利金を払うと、かえって課税関係が複雑になる

「きちんと地代を払ったほうが正しいのでは」と考える人もいますが、税務上はむしろ逆で、中途半端に地代を払うと課税関係が複雑になります。固定資産税相当額を超える地代を払うと、その貸し借りは賃貸借(借地権の設定)と評価される可能性が出てきます。第三者間の借地契約では、借地権の設定時に高額な権利金を授受するのが通常の地域が多く、権利金なしで借地権が設定されたと扱われると、借地権相当額の贈与(権利金の認定課税)という論点が生じ得ます。

「タダか、固定資産税相当額まで」ならシンプルに使用貸借、「それを超える地代」を払い始めると借地権や認定課税の検討が必要——と覚えてください。相当の地代を払う方式や無償返還の届出など、賃貸借でも課税を避ける仕組みはありますが、いずれも専門的な設計が必要です。親子間であえて地代を取りたい事情があるなら、始める前に税理士に相談すべき領域です。

住宅ローン——親の土地に抵当権を設定する同意が必要

住宅ローンでは、金融機関は原則として「建物とその敷地」の両方に抵当権を設定します。敷地が親名義の場合、親が自分の土地を子のローンの担保として提供すること(物上保証)への同意と、抵当権設定の手続きへの協力が必須です。親が担保提供を拒めば、その土地に家を建てる住宅ローンはまず組めません。

金融機関によっては、担保提供者である親に連帯保証人となることを求める場合もあります。また、親の土地が広く、その一部にだけ家を建てる場合は、建てる部分を測量して登記上分ける「分筆」を求められることがあります。分筆には土地家屋調査士への依頼費用と時間(境界確定を伴うと数ヶ月)がかかるため、資金計画とスケジュールに織り込んでおきましょう。

親の土地にすでに別のローンの抵当権が付いている場合や、土地の名義が祖父母のまま(相続登記が未了)の場合は、先にその整理が必要です。名義と担保の状態は、計画の初期段階で登記事項証明書を取って確認しておくとつまずきません。

農地なら農地転用の許可が先

親の土地が田や畑(登記地目や現況が農地)の場合、家を建てるには農地法に基づく農地転用の手続きが必要です。自分の農地に自分で建てるなら4条、名義を移したり借りたりして建てるなら5条の許可が基本で、市街化区域内であれば農業委員会への届出で足ります。

市街化調整区域や農用地区域(いわゆる青地)では、そもそも転用が許可されない土地もあります。許可には数ヶ月かかることも珍しくなく、許可前に造成や建築を始めることはできません。「親の畑に建てよう」という計画は、まず市町村の農業委員会に転用の可否と手続きを確認するところから始めてください。

相続の論点——「家が建った土地」は分けにくい

親の土地に家を建てることは、将来の遺産分割の観点では「分けにくい財産を作る」ことでもあります。兄弟姉妹がいる場合、親の死後にその土地は原則として相続人全員の遺産分割の対象になりますが、上にあなたの家が建っている土地を他の相続人が取得しても使い道がなく、かといってあなたが取得するなら他の相続人との公平をどう図るかが問題になります。

「長男が家を建てたのだから土地は長男のもの」という暗黙の了解は、法的には何の効力もありません。親が元気なうちに、遺言でその土地を誰に相続させるかを明確にし、必要なら他の兄弟姉妹への手当て(他の財産の配分や代償分割の原資となる生命保険など)まで決めておくのが、家を建てる側の責任と考えてください。

相続時の主な論点を挙げます。

  • 使用貸借の土地は相続税評価で減額がなく、自用地として満額評価される
  • 小規模宅地等の特例(評価額の大幅減額)が使えるかは、同居や生計一などの要件次第で、別棟に住む子は対象外となる場合が多い
  • 遺言がないと土地は兄弟姉妹全員での遺産分割の対象になり、家が建っていても当然には建てた子のものにならない
  • 土地を相続できなかった場合、他の相続人との間で借地・買い取り・立ち退きといった深刻な問題になり得る
  • 代償分割(土地をもらう代わりに他の相続人へ金銭を払う)の原資を、生命保険などで準備しておく方法がある
  • 土地の名義が祖父母のままなら、先に相続登記を済ませておく(相続登記は義務化されている)

生前に名義を移す場合の税負担——贈与は流通税も重い

「いっそ建てる前に土地の名義を子に移してしまおう」という選択肢もありますが、生前の移転にはコストがかかります。贈与税(暦年課税は累進税率で、評価額の大きい土地では負担大)に加え、名義変更に伴う登録免許税は贈与だと相続の5倍の税率で、相続なら非課税の不動産取得税もかかります。

相続時精算課税(累計2,500万円までの特別控除)を選択すれば贈与時の贈与税は抑えられますが、その財産は相続時に持ち戻して精算され、一度選択すると同じ贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。移すか、使用貸借のまま相続を待つかは、税負担の比較と家族の事情の両方で決める問題です。

土地の名義を子に移す方法の比較(2026年7月時点の概要)
方法主にかかる税金特徴・注意点
暦年課税で贈与贈与税(累進)+登録免許税(評価額の2%)+不動産取得税評価額が大きい土地では贈与税負担が重くなりやすい
相続時精算課税で贈与贈与税(累計2,500万円まで特別控除)+登録免許税2%+不動産取得税相続時に持ち戻して精算。選択後は暦年課税に戻れない
相続まで待つ(使用貸借)相続税+登録免許税(評価額の0.4%)。不動産取得税なし流通税は最も軽い。遺言等で誰が相続するかの手当てが必須

よくある質問

親の土地にタダで家を建てると贈与税がかかりますか?
土地を無償で借りる「使用貸借」であれば、土地を使う権利の価値はゼロとして扱われ、原則として贈与税はかかりません。子が固定資産税相当額を負担する程度なら使用貸借のままです。ただし、土地の名義自体を子に移す場合や、固定資産税相当額を超える地代を払う場合は課税関係が変わります。判断に迷う形を取る前に税理士へ確認してください。
地代を払ったほうがよいのでしょうか?
税務上はむしろ払わないほうがシンプルです。固定資産税相当額を超える地代を払うと賃貸借(借地権の設定)と評価される可能性があり、権利金の認定課税など複雑な論点が生じ得ます。親の収入にしたいなどの事情で地代を取りたい場合は、相当の地代方式や無償返還の届出といった専門的な設計が必要になるため、開始前に税理士に相談してください。
親の土地を担保に入れずに住宅ローンを組めますか?
原則として難しいと考えてください。金融機関は建物と敷地をセットで担保に取るのが通常で、親名義の敷地には親の同意による抵当権設定(物上保証)が必要です。親が担保提供に応じない場合、そもそも融資が受けられないことがほとんどです。計画の初期段階で、親に担保提供と(求められれば)連帯保証への協力を得られるか確認しておきましょう。
兄弟がいる場合、将来の相続はどうなりますか?
家を建てた土地も、親が亡くなれば原則として相続人全員による遺産分割の対象です。家が建っているからといって、建てた子が当然に相続できるわけではありません。遺言でその土地の行き先を指定してもらい、必要に応じて他の兄弟姉妹への代償(他の財産の配分や生命保険を原資とした代償分割)を準備しておくのが現実的な対策です。建てる前に家族で話し合っておくことを強くおすすめします。
小規模宅地等の特例は使えますか?
小規模宅地等の特例は、被相続人等の居住用・事業用宅地の相続税評価を大幅に減額できる制度ですが、適用には同居や生計を一つにしているなどの要件があります。親の土地に子が自分の家を建てて別世帯で暮らしているケースでは、その土地(子の家の敷地部分)には適用できない場合が多いと考えられます。適用可否は土地の使われ方と家族の状況次第で細かく分かれるため、相続税が見込まれる場合は税理士に確認してください。

参考情報